テニスボールで「簡易版・関節包内矯正」が可能
当院で患者さんに行っている施術法を、皆さんにご家庭で手軽に行っていただくために開発したのが、簡易版・関節包内矯正です。
関節を調整し、「正常な可動域」と「なめらかな動き」を取り戻させ、痛みを解消・緩和させる。
こうしたメカニズムは私が行う手技とまったく同じですが、「関節痛に悩むかたに、安全な方法で自分でも関節をケアしてほしい」という思いから長年研究し、誰でも1人で簡単に行えるようにした方法です。
簡易版・関節包内矯正には、首・腰・膝・股関節の4つのバージョンがあり、いずれも硬式テニスボールを使います。膝と股関節の場合、一度に使うボールは1個ですが首と腰の場合には2つのボールをくっつけて使用するため、ガムテープをご用意ください。
それぞれの関節についてのやり方がありますが、いずれも回数は1日3回が基本です。
今回は、腰の痛みを消す方法をご紹介しましょう。
現時点で関節が固まっているかたほど、行っているときに「イタ気持ちいい」感覚があるはずです。
それこそが、関節を本来あるべき状態に矯正している証拠です。くれぐれも、その感覚を「今までにない痛み」などとネガティブに考えず、いいものとしてとらえてください。
この簡易版・関節包内矯正を毎日の習慣にすれば、痛みをはじめとした関節トラブルは着実に消えていくでしょう。関節の異常が初期の段階なら、これだけで治るケースも数多くあります。
また、今のところは関節痛がないかたも、日常的に行えば将来の予防になります。
「腰」の痛みを消すテニスボール療法のやり方

骨盤にある仙腸関節は、体の重みや外部からの衝撃をクッションのようにやわらげる役割を果たしています。そのため、仙腸関節が正常に機能していれば、腰椎や腰の筋肉にかかる負担はかなり軽減され、首・膝・股関節などにかかる荷重も少なくなります。
その仙腸関節をゆるめて正常可動域を取り戻し、痛みを取っていくのが、「簡易版・腰の関節包内矯正」です。
用意するのは、「簡易版・首の関節包内矯正」と同じく、2個のテニスボールをぴったりとくっつけて固定したものです。
これを仙腸関節の位置に当てたまま、フローリングや畳などの硬い床の上にあお向けになって、そのまま1~3分間キープしましょう。ただし、枕は使わないでください。
テニスボールを仙腸関節にしっかり当てるには、次のような手順を踏むと間違いありません。
①お尻の割れ目の上にある尾骨の出っ張りの位置に握りこぶしを当てる
②用意しておいたテニスボールを、その握りこぶしの上に置く。その際、2個のテニスボールの左右中央に、握りこぶしがくるようにセットする
実践すると、ボールの当たる部分にイタ気持ちいい刺激が感じられるはずです。それが、仙腸関節に当たっているサインです。腰の状態がかなり悪くなっているかたには痛過ぎる場合があるので、そのときは両膝を曲げて行ってもかまいません。
また、この簡易版・腰の関節包内矯正は、ベッドや布団の上ではなく、必ず硬い床の上で行いましょう。回数の目安は1日3回、1回につき3分以内です。気持ちよくても、やり過ぎは禁物です。やり過ぎると、今度は仙骨が前に倒れ過ぎる可能性もあるからです。
少なくとも毎日起床後と就寝前、このように仙腸関節を刺激して矯正していけば、固まっていた仙腸関節は着実にゆるみ、可動域が広がって、腰の痛みやこりなどが自然と取れてくるでしょう。
腰の痛みは、股関節・膝・首の痛みにまで連鎖するケースが多いのですが、これらの痛みを発生させる根源はなにかといえば、骨盤にある仙腸関節です。これらの関節トラブルの予防に、簡易版・腰の関節包内矯正は必ず役立ちます。
今は腰に痛みがないかたも、普段、前かがみになりやすければ、早めの仙腸関節のケアとして実践してください。
解説者のプロフィール

酒井慎太郎(さかい・しんたろう)
さかいクリニックグループ代表。
柔道整復師。整形外科や腰痛専門病院、プロサッカーチームの臨床スタッフとしての経験を生かし、腰痛やスポーツ障害の施術を得意とする。
解剖実習をもとに考案した「関節包内矯正」を中心に、難治の腰痛や膝痛の施術を行っている。
●さかいクリニックグループ
http://www.sakai-clinic.co.jp/