私は長年、太極拳を皆さんに指導してきました。
最近は、健康維持ではなく「症状の改善」を求めて教室に通う生徒さんが多くなったと感じています。
肥満も、その一つです。やせたい、おなかをへこませたいという人が増えています。
そんな人にお勧めしているのが「おなか回し」です。
おなか回しは、正式には「スワイショウ」といい、太極拳を行うさいに、準備運動の一つとして行うものです。
おなか回しには、いくつかのパターンがありますが、最も手軽にできて、おなかをへこます効果の高いのが、ウエストを左右にひねりながら腕を振る回転のスワイショウ、つまりおなか回しです。
1日1回、3分を目安としておなか回しを行うと、ダイエット効果が期待できます。
お尻ではなくウエストを回す
おなか回しは、振り子運動の一種です。
足を肩幅に開いて、全身の力を抜いて、でんでん太鼓を振るように、なるべく余分な力を使わずに腕を振ります。
行ううえでのポイントがいくつかあるので、紹介しておきます。
①ひねるのは「ウエスト」
ひねる部分はあくまでもウエストです。
お尻をひねらないようにしましょう。
ウエストとは、ミロのビーナスのくびれラインが入っているところです。
つまり、ヘソの少し上になります。
ウエストの位置を確認してみましょう。
ウエスト=腰と考え、骨盤を回すと勘違いする人も多いのですが、骨盤を大きく動かしてしまうと、不安定になるうえ、肝心のウエストがあまりひねられず、くびれを作る効果も半減してしまいます。
なるべく骨盤を回さず、ウエストをしっかりひねり、上半身をひねるのがおなか回しの基本です。
上半身をしっかりひねることで、腹筋、背筋から、体の深層部にある筋肉まで、多くの筋肉がバランスよく効率よく動いて、さまざまな効能を発揮します。
②「視線で体を引っ張る」つもりで行う
おなか回しを上手にするコツは、「目で体を引っ張る」感じで、首、肩、ウエストを次々に動かすことです。
腕を振ろうと意識するのではなく、視線を後方に移しながら、肩からぶら下がった腕を体にまとわりつかせましょう。
③体の後ろの「目標」を決める
体をひねるときは、真後ろに何か目標物を決めておくとやりやすいでしょう。
体が硬い人は、精いっぱい向けるところまででけっこうです。
続けているうちに、だんだんと後ろを向けるようになってきます。

5分以上は行わない
おなか回しを行うのは、1日1回です。
左右の回転を1セットとして、30〜50セットを行いましょう。
時間にすると3〜5分程度といったところです。
途中で頭がクラクラする場合は、回数を少なめにしてください。
慣れるにつれ回数を増やして構いませんが、5分を限度にしましょう。
注意していただきたいのが、ひざの向きです。
ウエストをしっかりひねったときに、軸足のひざが内側に入りやすくなります。
このような動きを続けていると、ひざの故障や痛みにつながります。
つま先とひざ頭は、常に同じ方向を向いているようにして、軸足のひざが横振れしないように注意して行うようにしましょう。

解説者のプロフィール

楊進(よう・すすむ)
日本健康太極拳協会理事長。
北里大学卒、同大学大学院修士課程修了。内家拳研究会主幹。
太極学院学院長。
日本の太極拳普及に多大な貢献をした楊名時老師を父に持ち、自らも太極拳の普及、啓蒙に努める。
●日本健康太極拳協会
https://www.taijiquan.or.jp/