解説者のプロフィール

楊進(よう・すすむ)
日本健康太極拳協会理事長。
北里大学卒、同大学大学院修士課程修了。内家拳研究会主幹。
太極学院学院長。
日本の太極拳普及に多大な貢献をした楊名時老師を父に持ち、自らも太極拳の普及、啓蒙に努める。
●日本健康太極拳協会
https://www.taijiquan.or.jp/
1日1回3分を目安に行う
私は長年、太極拳を皆さんに指導してきました。
最近は、健康維持ではなく「症状の改善」を求めて教室に通う生徒さんが多くなったと感じています。
肥満も、その一つです。やせたい、おなかをへこませたいという人が増えています。
そんな人にお勧めしているのが「おなか回し」です。
おなか回しは、正式には「スワイショウ」といい、太極拳を行うさいに、準備運動の一つとして行うものです。
おなか回しには、いくつかのパターンがありますが、最も手軽にできて、おなかをへこます効果の高いのが、ウエストを左右にひねりながら腕を振る回転のスワイショウ、つまりおなか回しです。
1日1回、3分を目安としておなか回しを行うと、ダイエット効果が期待できます。
テレビの健康番組や、番組中の健康コーナーなどでも、おなか回しは何度も取り上げられています。
実際に番組中で、3人の人がおなか回しを2週間行ったときには、全員のおなかがへこんでウエストが細くなり、1人はパツパツだったジーンズがゆるくなって、指が2本入るようになりました。
わずか4回の教室でもおなかが引き締まった
また、以前『安心』でおなか回しを紹介したところ、始めて1〜2週間くらいで「確かにおなかがへっこんだ」「ウエストがキュッと引き締まった」
などの反響がありました。
私が指導している太極拳教室で、週1回の初心者向けコースの参加者にリサーチした結果でも、
4回の参加で、「おなかの周囲が引き締まった」「体脂肪率が減った」「ズボンがゆるくなった」などの回答が目立ちました。
わずか4回行っただけで、こうした声が聞かれるのです。
ダイエット効果の現れ方には、もちろん個人差がありますが、気らくに続けていれば、誰でも必ず効果が出てきます。
長く続けた人のなかには、20kg、10kgやせた人もいます。

ミロのビーナスのようなウエストも夢ではない
腕を振ってウエストをひねるだけの簡単な動作で、なぜこれほどの効果が得られるのか、簡単に説明しましょう。
●骨盤が矯正される
まず、おなか回しで体をひねると、股関節も連動して動きます。
股関節を動かすと、足と腰を深いところでつなぐ大腰筋が動きます。
大腰筋が衰えると、骨盤や背骨の位置がずれ、内臓は下垂し、下腹がポッコリ出やすくなります。
おなか回しを行うと、大腰筋が適度に鍛えられ、背骨もほぐれるので、背骨や骨盤が矯正されて、内臓が引き上げられます。
その結果、ポッコリ下腹が解消するというわけです。
●腸のマッサージ効果がある
腸の裏側を通っている大腰筋が活発に動くことで、消化器にマッサージ効果を与えます。
これが消化機能の増進や便秘の予防、内臓脂肪の燃焼にも寄与します。
また、ウエストを絞るように何度も動かすために腹筋の収縮と弛緩がくり返されるので、その部分の引き締め効果は特に顕著です。
2週間で2〜3cmは細くなりますから、ミロのビーナスのようなくびれも夢ではないかもしれません。
●全身の筋肉を調整できる
先に大腰筋の話をしましたが、実はおなか回しは、ゆるやかに見える運動ながら、ほぼ全身の筋肉を使っています。
腕というのは案外重く、体重が60kgの人なら、両腕の重さは約8kgになります。
そのように重いものを振り回すのですから、下半身と胴体の姿勢を維持する筋肉は、無意識のうちにバランスを取る働きをしています。
その結果、ほぼ全身の筋肉を使うことになるのです。
つまり、おなか回しを行えば、短時間で全身の筋肉が鍛えられ、かつ、調整されるわけです。
●基礎代謝量が増す
全身の筋肉が使われると、血流がよくなります。
すると、基礎代謝量が増します。
基礎代謝とは、寝ていても消費するエネルギー量で、これを上げることが、ダイエット成功のコツです。
ですから、おなか回しを習慣にすると、基礎代謝がアップして、やせやすい体に変わるのです。
年齢を問わず、誰でも手軽に行えるおなか回しを、ぜひ生活に取り入れてみてください。
次の記事では「おなか回し」のやり方を紹介しましょう。