首にやさしいイスの形を覚えておこう
「イス選び」は、首の生活処方箋において非常に重要な項目です。
私は、首の痛みを訴える患者さんがみえると、ふだん、職場や自宅でどんなイスを使っているか、くわしくうかがったり、携帯電話のカメラで撮ったイスの写真を見せてもらったりしたうえで、その対策を指導します。
首にやさしいイスは腰にもやさしいイスなのですが、そういったイスを使っている人はまれで、ほとんどの場合は、首にも腰にも悪いイスを使っています。
幸いにして職場などで買い換えてもらえるときや、患者さん自身が買い換える気持ちになられたときは、よいイスの条件を伝えて買いに行ってもらいます。さらに、可能な限り、候補に選んだイスの写真を見せてもらい、私がチェックしたうえで買ってもらうようにしています。
職場でも自宅でも、簡単には買い換えられないことのほうが多いので、その場合はクッションなどを使って補正してもらいます。
いずれにしても、首にやさしいイスの条件を知っておくことが大切です。以下にその条件をあげてみましょう。
【首にやさしいイスの条件】

❶自分の体に合う大きさ
奥まで深く腰かけたとき、床にきちんと足の裏がつくのが、その人に合う高さ・大きさのイスです。小柄な人が大きすぎるイスを使っているケースが多く見受けられます。
❷背もたれが肩甲骨の下端より高い
これより低いと、安定して体を支えられないので、背もたれの役割をじゅうぶんに果たせません。背もたれが高いイスを選びましょう。
❸背もたれが垂直か心持ち鋭角に立ち上がったあと、ゆるやかなカーブで後ろに反っている
具体的には図のようなフォルムで、これなら背骨のラインとフィットしやすいといえます。補正するときは、このフォルムに近づけます。
❹座面や背もたれに適度なクッション性がある
硬すぎるとリラックスできず、緊張を招いて首によくありません。硬い場合は薄いざぶとんなどを敷きましょう。
❺ひじ掛けはないか、もしくは調整できる
固定式のひじ掛けがあると、つっかえて体が机やテーブルに近づくことができず、前かがみ姿勢を助長することになりがちです。
実際には座ってみないとわかりにくいので、そのイスに深く腰かけて、前述の五つのステップの姿勢をとり、背もたれに寄りかかってみます。ある程度、力が抜ける位置でよい姿勢をつくることができ、背もたれと背中や腰の間に隙間ができないなら、首にやさしいイスといってよいでしょう。
逆に首に悪いイスの例としては、
・自分の体格に合わない(大きすぎる、小さすぎる)
・背もたれがない、一部分しかない、肩甲骨より低い
・背もたれの角度が、直立しすぎ、寝すぎなどで不適切
・座面や背もたれが硬すぎる
・ひじ掛けがじゃまな位置にあって調整できない
などがあげられます。
しかし、現実には、こうしたイスをがまんして使わなければならないことのほうが多いでしょう。なかでも、事務用のイスでは、背もたれが一部分しかなかったり、角度が好ましくなかったりすることが多いものです。そういう場合には、クッションや丸めたタオルなどで補正しましょう。
職場では、与えられたイスを使わざるを得ず、やむを得ない面もありますが、実際には自宅でも体に合わない大きすぎるイスを使っていることがあります。小学校では、同じ教室に大きさの違うイスや机があります。体の大きさに合ったイス選びはとても大切です。
解説者のプロフィール

竹谷内康修(たけやち・やすのぶ)
竹谷内医院院長。
東京慈恵会医科大学医学部医学科卒後、福島県立医科大学整形外科学講座へ入局。
福島県立医大附属病院等で整形外科診療に携わった後、米国へ留学。
ナショナル健康科学大学を卒業し、Doctor of Chiropracticの称号を取得。
2007年、東京駅の近くにカイロプラクティックの専門クリニックを開設。
腰痛、肩こり、頭痛、関節痛、手足のしびれなどの治療に取り組む。
日本整形外科学会会員、日本カイロプラクターズ協会(JAC)会員、日本統合医療学会(IMJ)会員。
●竹谷内医院
東京都中央区日本橋3-1-4日本橋さくらビル8階
TEL 03-5876-5987
http://takeyachi-chiro.com/