「首伸ばし」は、詰まった頚椎の間をやさしく広げる
肩こり・首こりに始まり、首や腕の痛み・しびれなどを起こす頸椎症。その根本的な原因となっている神経の圧迫を取り除く体操です。頸椎症でつまりやすい頸椎同士の間、とくに神経の通り道である椎間孔を無理なく広げます。
首のこりや痛みのある頸椎症全般に効果的ですが、なかでも腕や手のしびれ・痛みが出る頸椎症性神経根症や、頸椎椎間板ヘルニアの神経根症タイプのケアとしておすすめです。
頸椎の間を広げるという目的は、整形外科などでも行われることがある牽引療法と同じですが、牽引療法より首伸ばしのほうが無理なく効果的に行えます。とくに、首伸ばしは、頸椎を前に曲げて伸ばすことで、高い効果を発揮します。
通常、牽引療法は、座った姿勢で機械的に首を持ち上げます。牽引療法は頸椎を伸ばして真っすぐにするので、頸椎を前に曲げる首伸ばしとは作用が異なります。また、座った姿勢をとっている限り、首には頭の重さがのしかかっているので、負荷をかけながら持ち上げることになります。しかも、機械的に持ち上げるので、その人に必要な牽引の程度とピッタリ合っていればよいのですが、強すぎれば負担になり、弱すぎれば効果が弱いということになりがちです。
ここで紹介する首伸ばしは、頭を下げて首に力を入れなくてよい体勢で行います。頭の重さを取り去って行うので、効果が得やすくなります。そして、自分の頭の重さを利用して頸椎の間を自然に広げたあと、自分の手で無理のない範囲にそっと頭を押して、さらに広げます。自分にとって気持ちのいい範囲で行うことで、適切な力が加えられます。
首や肩のこりを感じている人が、首の痛みの予防法として行うのもよいでしょう。とくに、頸椎のあたりが重だるく、つまったような感じがする人が行うと、そうした症状の改善と首の痛みの予防に役立ちます。
ただし、この体操は頭を下に向けるので、首にはやさしいのですが、高血圧や脳血管になんらかの障害や心配がある人には負担になる場合があります。そのような場合は、事前に医師に相談してください。また、めまいがしたり、痛みやしびれ、違和感が生じたりしたら中止しましょう。
首伸ばしには数種類のバリエーションがありますが、ここではまず、最もシンプルで効果が高く、どこでもできる、立って行う首伸ばしを紹介します。
立って行う首伸ばしは、どこでも行えるので便利です。ただし、慣れるまでは、イスなどに一方の手をついて行うとよいでしょう。とくに、頭を下げるときに少しでも不安定さや不安感のある人はそうしてください。
「首伸ばし」のやり方

❶足を肩幅に開いて立つ
❷ゆっくり前屈して上体を下げ、さらに頭を少しずつ下げていく。このとき、片方の手を腰の後ろにのせておく
❸頭頂部が真下に向くところまで下げ、首の力を抜く。頭の重みで首が自然に引っぱられて伸びる感じにする
❹もう一方の手を後頭部に当てる。手のひら全体を使って、後頭部を包み込むように当てるとよい。その手で、さらに首が伸びるようにジンワリと押さえる。とくに症状が出たり、悪化したりしなければ、首が曲がるように押す
❺10〜30秒保ったあと、手を後頭部から離し、ゆっくり徐々に上体を上げて①の姿勢に戻る。以上を三回くり返すことを一セットとし、一日に数セット行う
★注意!
一方の腕にしびれや痛みのある頸椎症性神経根症や頸椎椎間板ヘルニアの神経根症タイプの人は、②で腰の後ろにのせる手は症状のあるほうにし、④の動作は症状がないほうの腕で行ってください。
解説者のプロフィール

竹谷内康修(たけやち・やすのぶ)
竹谷内医院院長。
東京慈恵会医科大学医学部医学科卒後、福島県立医科大学整形外科学講座へ入局。
福島県立医大附属病院等で整形外科診療に携わった後、米国へ留学。
ナショナル健康科学大学を卒業し、Doctor of Chiropracticの称号を取得。
2007年、東京駅の近くにカイロプラクティックの専門クリニックを開設。
腰痛、肩こり、頭痛、関節痛、手足のしびれなどの治療に取り組む。
日本整形外科学会会員、日本カイロプラクターズ協会(JAC)会員、日本統合医療学会(IMJ)会員。
●竹谷内医院
東京都中央区日本橋3-1-4日本橋さくらビル8階
TEL 03-5876-5987
http://takeyachi-chiro.com/