「背骨ストレッチ」は、ネコ背を矯正して背骨のS字カーブを回復させる
頸椎症による首の痛みを抱える人は、多くの場合、首が前に出て背中が丸まり、ネコ背になっています。姿勢に気をつけてネコ背を解消しようとしても、なかなかうまくいきません。なぜなら、この姿勢が定着して、ネコ背の形で背骨が固まり、筋肉もこわばっているので、気をつけても直らないのです。
そこで、こわばった胸の筋肉をストレッチし、胸椎(背骨の胸の部分)の動きをよくするのが「背骨ストレッチ」です。
正常な背骨は、頸椎が軽い前弯(丸みが前に向かう形のカーブ)、胸椎が軽い後弯(丸みが後ろに向かう形のカーブ)、その下にある腰椎(背骨の腰の部分)が軽い前弯、仙骨(背骨のいちばん下にある三角形の骨)がまた軽い後弯になっており、全体がゆるやかなS字カーブを描いています。
頸椎症を起こす人の背骨は、このS字カーブがくずれて、頸椎が真っすぐ前に出たストレートネックになっていたり、胸椎から仙骨にかけて大きなCの字を描くように背骨が丸まっていたりします。背骨ストレッチは、頸椎の土台の部分から改善するエクササイズです。
「背骨のゆがみ」というと、一般に多くの人は左右のゆがみを気にします。つまり、鏡で正面から見たときの左右の肩の高さの違い、骨盤の高さの違い、頭の傾きなどです。ところが、それらの左右の違いはせいぜい数mmから1cm、2cmあるかどうかです。
ところが、横から見たときの前後のゆがみは、左右とはけた違いに大きくなります。ネコ背で頭が前に出た状態だと、正常な位置から10cmずれることもめずらしくありません。当然、体への負担は、前後にずれたときのほうがはるかに大きくなります。
姿勢の悪化は、多くの人が気にする左右のズレやゆがみより、前後のズレやゆがみのほうがはるかに重要なのです。座った姿勢などで悪化しやすいのも前後のズレやゆがみです。
それだけに、日ごろから心がけて前後のゆがみをリセットすることが大切です。紹介する三つの頸椎エクササイズは、すべて前後のゆがみのリセットに役立ちますが、なかでもその効果が大きく、背骨のS字カーブの回復促進に役立つのが背骨ストレッチです。
「背骨ストレッチ」のやり方

❶足を肩幅に開いて立つ
❷両腕を背中側に回し、お尻のところで手を組む(手の組み方は自由)
❸ひじを伸ばして胸を張り、腕を後ろに少し持ち上げる。さらに、腕全体を手の方向へ引き下げる。10〜30秒キープしたあと、力を抜いて②の姿勢に戻る。以上を3回くり返すことを1セットとし、1日に何セット行ってもよい
★注意!
できるだけ胸を張ります。③の動作で腕を上げすぎるとじゅうぶんに胸を張れなくなるので、腕を持ち上げすぎないように注意しましょう。肩が痛い人は無理をしないでください。その場合は、手を握らずに、ひじを伸ばして、肩よりやや下で両手を後ろに反らせるだけでも効果があります。
解説者のプロフィール

竹谷内康修(たけやち・やすのぶ)
竹谷内医院院長。
東京慈恵会医科大学医学部医学科卒後、福島県立医科大学整形外科学講座へ入局。
福島県立医大附属病院等で整形外科診療に携わった後、米国へ留学。
ナショナル健康科学大学を卒業し、Doctor of Chiropracticの称号を取得。
2007年、東京駅の近くにカイロプラクティックの専門クリニックを開設。
腰痛、肩こり、頭痛、関節痛、手足のしびれなどの治療に取り組む。
日本整形外科学会会員、日本カイロプラクターズ協会(JAC)会員、日本統合医療学会(IMJ)会員。
●竹谷内医院
東京都中央区日本橋3-1-4日本橋さくらビル8階
TEL 03-5876-5987
http://takeyachi-chiro.com/