正常な頚椎と、ストレートネックの違い

「どうも近ごろ、首が痛い」
「すぐ治ると思った首の痛みがなかなか取れない」
そんなとき、多くの人は整形外科に行くでしょう。
そこでは、どのような診療が行われるでしょうか。もちろん、実際の診療風景は、医師や医療機関によってさまざまですが、一般的な例をあげてみましょう。
「先生、首が痛いのですが……」
「いつから、どう痛むのですか」
「一ヵ月くらい前から痛むようになって、すぐ治ると思ったのですが、治らなくて、逆にひどくなってきたのです」
「腕のほうに響きますか」
「いえ、腕はなんともありません」
「まずレントゲンを撮ってみましょう」
たいていは、このようなやりとりで、X線写真を撮ることになります。
その結果、とくに異常が見つからなければ、
「異常はないですね。薬を飲めば大丈夫ですよ」
などといわれるでしょう。
この場合の薬は、いわゆる「痛み止め(鎮痛薬)」が中心になります。これで痛みが取れる人も多いのですが、なかには鎮痛薬が思うように効かないケースもあります。
一方、X線検査でなんらかの異常が見つかった場合はどうでしょうか。
頚椎の位置と構造について

首の骨は、背骨の他の部分と同じく、「椎骨」という骨がつながってできています。首の部分の七個の椎骨を「頸椎」といいます。椎骨同士の間には、クッション役をしている「椎間板」がはさまっています。
X線検査で見つかることが多いのは、椎間板が薄くなって頸椎同士の間が狭くなっているとか、頸椎の一部が変形してトゲのように出っぱっているなどの異常です。こういった異常が見つかれば、
「首の骨同士の間が狭くなっていますね。これが原因でしょう」
「骨にトゲができているから痛むのです」
というような説明になるでしょう。病名をいうタイプの医師であれば、ここで「頸椎症」という言葉を口にするかもしれません。頸椎症とは、頸椎の変性がもとになって起こる病気です。
患者さんが一定の年齢以上であれば、「老化現象ですね」といわれる場合もあるでしょう。頸椎症は、加齢が主要な原因となって起こるからです。
あるいは、頸椎全体の形が問題になることもあり得ます。健康な頸椎には若干のカーブがあり、前弯(丸みが前に向かう形でカーブしていること)になっているのが正しい形ですが、その弯曲がなくなって真っすぐになっている状態を「ストレートネック」と呼びます。
これが見つかれば、
「首の骨の形がよくない。真っすぐになっていますね」
「ストレートネックだから痛いのですよ」
などといわれたりするでしょう。
ただし、このように原因らしき異常を指摘されたとしても、「では、それに対してどうすればよいのか」が明確に示されることはほとんどありません。親切な医師であれば、「姿勢に気をつけてくださいね」というようなアドバイスくらいはくれるかもしれませんが、具体的にどう気をつければよいかは、患者さんにはまずわからないでしょう。
けっきょく、原因らしきものが見つかった場合でも、整形外科で受けられる治療は、痛み止めの薬が中心になります。
痛み止めの薬の投与は、痛みを取ることだけを考えるなら、すぐれた治療法です。痛みで眠れないとか、仕事ができないとかといった悩みを抱える患者さんが、それによって救われる場合も多いので、これはこれで大切な治療です。
しかし、整形外科で受けられる治療のほとんどは、痛みという症状を取る「対症療法(症状の改善のみを目的とした治療法)」であって、病気の根本に働きかけているわけではありません。患者さんとしては、そのことをよく知っておく必要があります。
そもそも首の痛みは、どんな原因から起こるのでしょうか。
次の記事で説明しましょう。
解説者のプロフィール

竹谷内康修(たけやち・やすのぶ)
竹谷内医院院長。
東京慈恵会医科大学医学部医学科卒後、福島県立医科大学整形外科学講座へ入局。
福島県立医大附属病院等で整形外科診療に携わった後、米国へ留学。
ナショナル健康科学大学を卒業し、Doctor of Chiropracticの称号を取得。
2007年、東京駅の近くにカイロプラクティックの専門クリニックを開設。
腰痛、肩こり、頭痛、関節痛、手足のしびれなどの治療に取り組む。
日本整形外科学会会員、日本カイロプラクターズ協会(JAC)会員、日本統合医療学会(IMJ)会員。
●竹谷内医院
東京都中央区日本橋3-1-4日本橋さくらビル8階
TEL 03-5876-5987
http://takeyachi-chiro.com/