解説者のプロフィール

勝野浩(かつの・ひろし)
ヒロ整形クリニック院長。
1962年、愛知県出身。
88年、浜松医科大学卒業。
94年、浜松医科大学大学院卒業。医学博士。
大学院在学中に、ハーバード大学ボストン子供病院に留学し、骨代謝の研究を行う。
98年、ヒロ整形クリニックを開院。
腰痛や四十肩などの一般的な整形外科疾患はもとより、 スポーツ整形と骨粗鬆症に力を入れている。
『1日10分の「ふくらはぎ+太もものばし体操」で若返る』(SBクリエイティブ)など著書多数。
●ヒロ整形クリニック
愛知県長久手市山越101-1
TEL 0561-61-0707
https://hiroseikei.jp/
腰痛の原因は加齢だけではなく栄養不足も
腰痛の原因はさまざまですが、多くの場合、体を支える背骨(脊柱)や靱帯(骨と骨とつなぐ繊維状の組織)、軟骨、筋肉の衰えがかかわっています。
これらの器官の衰えを助長するのは、加齢だけではありません。
組織を作っているたんぱく質などの栄養不足も、大いに影響しています。
栄養不足におちいった組織は柔軟性が低下し、変形しやすくなって衰えに拍車がかかります。
腰痛を改善するには、食事で十分な栄養をとり、骨や筋肉の衰えにブレーキをかけることが大切です。
そこでお勧めしたいのが「魚の缶詰」です。
魚には、骨や靱帯、軟骨、筋肉が必要とする栄養が詰まっているのですが、それらの栄養素をもれなくとれるのが、缶詰なのです。
栄養不足が腰痛をもたらす仕組み
まず、栄養不足が腰痛をもたらす仕組みを、加齢によって起こる腰痛の代表である、脊柱管狭窄症を例に説明します。
背骨は、24個の椎骨と仙骨、尾骨が積み重なってできています。
脊柱管は背骨を貫く空洞で、その中を中枢神経が通っています。
脊柱管狭窄症は、この脊柱管が狭くなって神経が圧迫され、足腰に痛みやしびれを起こす病気です。
脊柱管が狭くなる第一の原因が、椎骨を支えている靱帯の衰えです。
靱帯の主成分であるエラスチンというたんぱく質が不足すると、靭帯から弾力が失われて、硬く厚くなってしまいます。
第二の原因は、椎骨の変形です。
カルシウムやマグネシウムなどのミネラルや、骨の柱となるコラーゲンなどのたんぱく質が不足すると、骨がもろくなります。
その結果、椎骨が変形してトゲのような突起(骨棘)が出っ張り、脊柱管を狭めます。
コラーゲンやコンドロイチンなどのタンパク質不足が影響
第三の原因は、椎骨と椎骨の間にある軟骨の一種、椎間板の変形です。
椎間板の主要な成分であるコラーゲンやコンドロイチンなどのたんぱく質が不足すると、椎間板の柔軟性が低下します。
すると、一部が脊柱管の内部にせり出して、脊柱管が狭くなるのです。
腰痛のもう一つの代表的な症状である、腰椎椎間板ヘルニアも、コラーゲンやコンドロイチン不足が影響しています。
椎間板の弾力が失われることで、椎間板の中心にある髄核が外に飛び出し、神経を圧迫して腰痛や足のしびれを招きます。
骨や軟骨に異常が起きていない腰痛(非特異的腰痛)の場合も、骨や筋肉の衰えを防ぐことは非常に重要です。
骨や皮が丸ごととれる「サバ缶」がお勧め
このように、良質なたんぱく質と、ミネラルを十分に摂取することが、腰痛の予防と解消のためには欠かせません。
そこで、たんぱく質とミネラルを豊富に含む食材として、最適なのが魚です。
魚肉:骨や筋肉の材料となるたんぱく質が豊富。
皮:靱帯の弾力性や筋力の維持に必要な、エラスチン、コラーゲンが含まれる。
骨:骨の主成分であるカルシウムと、カルシウムの吸収を促すマグネシウムのほか、コラーゲン、コンドロイチンに富み、骨を丈夫にする。特にサケの骨は、椎間板の弾力性を回復させるコンドロイチンが豊富。
ただ、魚を骨と皮も含めて丸ごと食べられるように調理するのは、なかなか難しいところがあります。
そこで、お勧めなのが、サバ、サンマ、サケやイワシなど、魚の皮、身、骨がすべて入ったまま調理された缶詰です。
缶詰は、高圧で加熱処理されているため、骨や皮が軟らかくなっていて、無理なく丸ごと食べることができるからです。
魚の缶詰を食べる頻度や量に決まりはありません。
普段の食事のメニューに積極的に取り入れてください。

腰痛のために「糖質」も控えた方がよい
もう一つ、腰痛の改善には、糖質(炭水化物のうち、食物繊維を除いた成分。血糖値を上げる原因となる)を控えめにすることも大切です。
糖質は、甘いものをはじめ、ご飯やパン、イモ、マメ(大豆を除く)などに多く含まれています。
糖質のとりすぎは肥満を招き、体重が腰に負担をかけて、腰痛の原因になります。
また、糖質には、体内でたんぱく質と結びつき、組織を変性させて硬くする性質もあります。
エラスチンや、コラーゲン、コンドロイチンなどのたんぱく質が変性し、靱帯や椎間板、軟骨が硬くなると、背骨の動きが悪くなって腰痛がひどくなってしまいます。
朝、昼の主食をこれまでの半分に減らし、夜は主食をとらず魚、肉、野菜、大豆などのおかずを中心に食べる。
この食事スタイルにできるだけ近づけるのがお勧めです。