脊柱管狭窄所の前兆とは? 足に痛みやしびれが出たら要注意

足の裏や立ち上がった時の違和感、つまずきなどの前兆がある

前ぶれの変化が出てきたら、整形外科で診察を受けてみるとよい
脊柱管狭窄症とは、主に加齢が原因で、徐々に進行する慢性的な病気です。ある日、急に悪くなって、突然、歩けなくなるといった、急性の病気ではありません。
ですから、その症状は、本人も気づかないうちに進行します。姿勢の悪さは、脊柱管狭窄症を引き起こす有力な要因ですが、ふだんから姿勢が悪いからといって、すぐに病気を発症するわけではありません。
いつから脊柱管狭窄症が始まったか、非常にわかりにくいのです。
悪い姿勢が習慣化すると、余計な負荷が背骨に長年にわたって、かけ続けられることになります。加齢に加えて、こうした負荷が積み重なって、中高年以降にそれが限界に達したとき、脊柱管狭窄症が引き起こされます。「気づいたら、いつの間にか脊柱管狭窄症になっていた」というケースがはるかに多いのです。
次に、50代以降で、脊柱管狭窄症の前ぶれと考えられる症状を挙げてみましょう。
①長い間立っていると、足がしびれてくる。
②正座したわけでもないのに、足の裏にしびれがある。
③長時間歩いたわけでもないのに、足がだるくて重い。
④いすから立ち上がるとき、足に痛みが出る。
⑤敷居など、少しの段差でつまずくことが多くなる。
⑥靴をはいたとき、中に小石など異物が入っているような違和感がある。
⑦足の裏に、粘着物がはりついている感じがする。
脊柱管狭窄症は、加齢や長年の姿勢の悪さによって脊柱管がしだいに狭くなり、それが神経を圧迫し、ついには痛みやしびれとなって発症する病気です。
歩いている際、足に痛みやしびれが出て動けなくなる症状が現れます。この「間欠性跛行」は、脊柱管狭窄症の最も特徴的な症状ですが、はっきりした症状として現れる以前でも、狭くなった脊柱管が、神経を圧迫して症状が出ることがあります。
こうした前ぶれの変化が出てきたら、脊柱管狭窄症を疑い、整形外科で診察を受けてみるとよいでしょう。病気に気づき、早期から対策を取れば、それだけ症状の進行を予防することも可能となるのです。
脊柱管狭窄症と椎間板ヘルニアとの見分け方

脊柱管狭窄症、椎間板ヘルニアは、神経が圧迫されることによって症状が出る点では同じ
ただし、足腰に痛みやしびれが出たからといって、それがすべて脊柱管狭窄症であると決めつけることはできません。同様に、足腰に痛みやしびれが出る腰の代表的な病気としては、「椎間板ヘルニア」があります。
椎間板は、背骨の骨(椎骨)と骨の間にあって、背骨にかかる負荷を和らげる働きをしている軟骨です。この軟骨の中には、ゼリー状の組織があります。なんらかの原因によって、軟骨からこのゼリー状の組織が外に飛び出し、それが神経を圧迫して腰痛が起こるのが、椎間板ヘルニアです。
脊柱管狭窄症、椎間板ヘルニアは、神経が圧迫されることによって症状が出る点では同じです。痛みとしびれという共通項もあるため、この2つを誤認しないことが重要です。
そこで、両者の簡単な見分け方を示しておきましょう。
立った姿勢で前屈と後屈をしてみてください。前屈をしたほうが楽な場合は、脊柱管狭窄症。後屈をしたほうが楽な場合は、椎間板ヘルニアになります。
脊柱管狭窄症では、前屈をすると、脊柱管が広がるため、神経の圧迫が少なくなり、楽になります。
椎間板ヘルニアは、腰を前にかがめると、椎間板がつぶれて後ろにはみ出て神経にさわるため、痛みが出ます。逆に、後ろに倒すと、椎間板ヘルニアは楽になります。
つまり、この2つの病気は、日常的な対策として、全く逆の動きが求められることになります。
脊柱管狭窄症の人は、後屈すると、脊柱管が狭まり、痛みやしびれが出やすくなります。ですから背中を反らす体操などは勧められません。
椎間板ヘルニアの人は、前屈を避け、後屈の体操が勧められることになります。
また、脊柱管狭窄症は、主に加齢によって起こるため、50代以上に多く見られます。これに対して、椎間板ヘルニアは20代から起こることの多い病気です。これも、見分けるポイントの1つとなるでしょう。
いずれにしても、2つの病気を見誤って、合わない体操をしていると、症状をかえって悪化させてしまうことがありますから、くれぐれも注意が必要です。
脊柱管狭窄症と似た症状の病気「閉塞性動脈硬化症(ASO)」も注意

心配な点があれば、担当医に相談し、検査を受けることがお勧め
ほかに、脊柱管狭窄症と似た症状を呈する病気があります。その1つが、閉塞性動脈硬化症(ASO)です。
これは、血栓(血の塊)で動脈がふさがり、血流障害が起こる病気です。しばしば足の動脈に血栓が詰まり、血流障害が起こります。このため、歩いていると、足の裏や太ももなどに痛みが出て、歩けなくなります。少し休むと、また歩けるようになります。こうした症状は、脊柱管狭窄症の間欠性跛行とかなり似ています。
脊柱管狭窄症の場合、前かがみになると、楽になります。つえをついたり、カートを押したりすることでも楽になるでしょう。
ところが、閉塞性動脈硬化症では、前かがみになっても楽になりませんし、つえやカートを使っても変わりません。また、脊柱管狭窄症の場合は、自転車に乗ると楽になるものですが、閉塞性動脈硬化症では、痛みやしびれは変わりません。
閉塞性動脈硬化症が疑われる場合は、整形外科で診察を受けたのち、専門医を紹介してもうといいでしょう。
ほかに、もともとガンにかかっていた人に、しつこい腰痛が現れた場合は注意が必要です。ガンの転移によって起こる腰痛は、脊柱管狭窄症のように休んでも治まらず、痛みが安静時も続きます。心配な点があれば、担当医に相談し、検査を受けることをお勧めします。
解説者のプロフィール

竹谷内康修
東京慈恵会医科大学医学部医学科卒後、福島県立医科大学整形外科学講座へ入局。福島県立医大附属病院等で整形外科診療に携わった後、米国へ留学。ナショナル健康科学大学を卒業し、Doctor of Chiropracticの称号を取得。2007年、東京駅の近くにカイロプラクティックの専門クリニックを開設。腰痛、肩こり、頭痛、関節痛、手足のしびれなどの治療に取り組む。日本整形外科学会会員、日本カイロプラクターズ協会(JAC)会員、日本統合医療学会(IMJ)会員。