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【急な腰痛対策】ぎっくり腰の治し方は腸腰筋のストレッチ「アザラシポーズ」

【急な腰痛対策】ぎっくり腰の治し方は腸腰筋のストレッチ「アザラシポーズ」

ぎっくり腰(急性腰痛症)とは筋肉の痙攣が原因で激痛が起こる症状です。ギックリ腰は、いわば腸腰筋が「こむら返り」を起こしているようなものなのです。皆さんは、こむら返りの時、どう対処しますか?痛みに耐えながら痙攣した筋肉を伸ばそうとすると思います。ギックリ腰への対策も同じです。【解説】太田邦昭(太田整形外科院長)

解説者のプロフィール

太田邦昭(おおた・くにあき)
●太田整形外科
豊橋市大岩町字北山351
TEL 0532-41-6800
http://www.ohiwanomori.or.jp/seikei/

太田整形外科院長。
名古屋市立大学医学部卒業。医学博士。
日本整形外科学会専門医、日本リウマチ学会専門医、日本医師会認定健康スポーツ医。
運動器疾患を専門に治療・予防をする整形外科、健康運動施設で生活機能の維持・向上を図るフィットネスクラブ、リハビリに特化した介護保険サービスを提供するデイケアを複合した医療法人「大岩の森」を開設。
運動器疾患の治療、ロコモやメタボ対策、高齢者の運動器不安定症などに、幅広く対応している。

あなたの腰痛の原因は「筋肉」かもしれない

そけい部で、脈拍が感じられるところのやや外側(下図・左)を、親指でギュッと押し込んでみてください。
ズキンと強い痛みを感じたら、あなたの腰痛は筋肉が原因で起こっている可能性が高いです。

整形外科医として、長年、腰痛の診療に当たる中で、多くの腰痛は、これまで重視されてきた骨や椎間板、関節よりも、筋肉の異常が大きな原因ではないかと考えるようになりました。
特に重要なのが、腸腰筋です。

「腸腰筋」の位置と働き

腸腰筋は体の深部にある深層筋で、腰椎(腰の部分の背骨)と大腿骨(太ももの骨)をつないでいる、大腰筋と腸骨筋という二つの筋肉の総称です。

上半身と下半身をつなぎ、体の中心部を支えて軸を安定させ、股関節を曲げたり、骨盤を安定させたり、腰椎のS字カーブを維持するなど、足・骨盤・背骨の働きに大きく関与しています。

腸腰筋が縮んでいると直立二足歩行ができない

ちなみに、生まれたばかりの赤ちゃんは、腸腰筋が縮んでいて股関節を伸ばせないため、常に足がMの字の形に開いています。

そして少しずつ寝返りを打ち、腹ばいになってひじで体を支える姿勢を続けることで、腸腰筋をストレッチしています。

つまり、人は、腸腰筋が十分に伸ばせるようになって初めて、直立二足歩行ができるようになるのです。

腸腰筋が萎縮すると神経の圧迫が進み、腰痛が起こる

また、腸腰筋の中には、腰から下の広い範囲にかかわる神経が、多数貫通しているのも特徴です。
そのため、腸腰筋が疲労し萎縮すると、血液などの流れが悪くなり、筋肉にこりができて内部の神経を圧迫します。
圧迫された神経が支配している領域の部位に、痛みや不具合を引き起こすと考えられるのです。

長時間座ったまま仕事をしている人や、日常的に体を動かす機会が少ない高齢者などは、腸腰筋が疲労したり、萎縮しやすい状況にあります。

そのため、股関節をしっかりと伸ばせなくなり、それに伴って、腰やひざが曲がったまま立ったり歩いたりする姿勢が常態化します。
すると、さらに腸腰筋が萎縮して神経の圧迫が進み、腰痛を起こす悪循環に陥ってしまうのです。

ギックリ腰は「腸腰筋ストレッチ」をやればその場で痛みが治まる

不意に激烈な痛みに襲われるギックリ腰も、腸腰筋のけいれんが原因です。
ギックリ腰は、いわば腸腰筋が「こむら返り」を起こしているようなものなのです。

皆さんは、ふくらはぎにこむら返りを起こしたとき、どう対処しますか? 
痛みに耐えながら、けいれんした筋肉を伸ばそうとすると思います。

ギックリ腰や腰痛が起こったときも同じこと。
腸腰筋をしっかりとストレッチしてやることで、痛みが軽減されるのです。

ギックリ腰で来院された患者さんに、腸腰筋のストレッチを行ってもらうと、ほとんどのかたがその場で痛みが治まり、大変驚かれます。
来院時は前かがみになって小股でヨタヨタと歩いて来られた患者さんが、背すじを伸ばしてスタスタ歩いて帰られます。

どのように腸腰筋を伸ばすかというと、先ほど説明した、赤ちゃんが腹ばいになった姿勢です。
ちょうどアザラシの子ども(パピー)のように見えることから、運動発達の上で「パピー(アザラシ)ポーズ」と呼ばれます。

このアザラシポーズを、腰痛で当院を受診される患者さんに、10年ほど前から推奨、指導し、高い効果を上げています。

腸腰筋を伸ばす「アザラシポーズ」「上体起こし」のやり方

やり方は簡単です。まず、床やベッドにうつぶせになります。
へそが床やベッドから離れないように気をつけて、上体を起こし、ひじを直角に曲げて上体を支えます。 

腹ばいで本を読むときのような姿勢で背中から腰の筋肉の力を抜き、上体を反らしすぎないことが重要です。
声を出してゆっくり10を数えたら、うつぶせに戻り、5秒休みます。

声を出しながら数えるのは、呼吸を止めないためです。
この動作を5回、くり返します。

腕で体を支えることすら難しい場合は、枕や巻いたバスタオルなどを胸の下に当て、体を預けた姿勢を1分間保つといいでしょう。

上体起こしと合わせるとより効果的


できれば上体起こし運動も一緒に行うと、より効果的です。

背筋の緊張をとります。
ひざを曲げてあおむけになり、手をひざに向かって伸ばしながら、上体をゆっくり起こします。
指先がひざに届くまで(届かない場合は無理をしないで)上体を起こしたら、動きを止めずにそのままゆっくり元の位置に戻ります。
これを5回くり返します。

起床時と夕方にやるのがお勧め

腸腰筋が弱いと骨盤が後傾しネコ背になりやすく、柔軟性がないと骨盤が前傾して背中が反りすぎ、腰へのストレスが強くなります。

そこで、アザラシポーズと上体起こし運動で腸腰筋をストレッチして、腰の筋肉の緊張をほぐしてあげることで腰痛が軽減し、下半身の動きがスムーズになるのです。

このアザラシポーズと上体起こし運動を1日2~3回行います。
特に、起床時と疲れがたまってくる夕方がお勧めです。腰に疲れを感じたときは随時行ってください。

※これらの記事は、マキノ出版が発行する『壮快』『安心』『ゆほびか』および関連書籍・ムックをもとに、ウェブ用に再構成したものです。記事内の年月日および年齢は、原則として掲載当時のものです。

※これらの記事は、健康関連情報の提供を目的とするものであり、診療・治療行為およびそれに準ずる行為を提供するものではありません。また、特定の健康法のみを推奨したり、効能を保証したりするものでもありません。適切な診断・治療を受けるために、必ずかかりつけの医療機関を受診してください。これらを十分認識したうえで、あくまで参考情報としてご利用ください。

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