このままだと歩けなくなるのではと心配に
私は、「システマ」という武術のインストラクターをしています。
システマは、ロシア伝統の武術で、個別の技だけでなく体の使い方の原理を習得することに重点が置かれたものです。
そんな私が、ひどい腰痛に苦しむようになった原因は、3年ほど前の交通事故にあります。
信号無視の車に大きく跳ね飛ばされ、路肩の石にぶつかりました。
武術の経験がある私でなければ、もっと大きなケガを負っていたでしょう。
システマでは、転んだときにケガをしないコツも教えています。
それは、倒れたとき、息を止めずに呼吸をすることです。
私は、その心得を守り、とっさに受け身を取ったおかげで、打撲や骨折といった大きなケガは全くなかったのです。
それでも、車に跳ねられたダメージは、体に残っていたのでしょう。
それ以来、冬になるたびに腰が痛むようになりました。
しかも、痛みはだんだんひどくなるばかり。
朝、起き上がるだけでも大変で、このままだと歩けなくなるのでは、と心配になるほどでした。
そして、去年の暮れに、とうとうたまりかねて、整形外科に駆け込みました。
レントゲンを撮ると、腰椎5番の椎間板が潰れており、通常の半分くらいの大きさになっているとのこと。
椎間板が潰れていたのですから、痛みが生じるのは当然だったでしょう。
通常、椎間板は多量の水分を含んでいるものですが、年を取ると、水分が抜けて潰れてくるのだそうです。
医師によると、「当面はリハビリしながら様子を見ましょう」ということでしたが、それでもよくならなければ、手術が必要になるとも告げられました。
私は、手術を受けるのだけは避けたかったので、なんとかよくする方法はないものかと考えを巡らせました。
まず思いついたのは、「体の冷えが悪影響を及ぼすのではないか」ということでした。
そこで、半身浴をしたり、使い捨てカイロを何枚も貼はったりしたのですが、全く効き目がないのです。
そんなあるとき、医師が「椎間板の水分が抜けている」といっていたのを思い出しました。
よくよく考えてみれば、自分の体は、かなり乾燥しているのではないかと。
日ごろ、コーヒーやビールは大量に飲んでいましたが、肌も唇もカサカサに渇き、口の中はネバネバしていました。
しかも、冬になって、空気が乾燥してくると、決まって腰が痛み出します。
もし、腰の痛みの原因が水分不足にあるなら、解決策は見えてきます。
要は、足りない水を補えばいいのです。
システマの創始者であるミカエル・リャブコ氏も、水を1日に2L飲むように勧めています。
そこで私は、試しに、水を大量に飲んでみることにしたのです。
その翌朝ウソのように痛みが軽減していた!
朝起きてから、小まめに水を飲み続け、その日寝るまでに約4Lの水を飲むようにしました。
そして、翌朝目が覚めると、ウソのように痛みが軽減していたのです!
多少の痛みは残っているものの、身動きを取れないようなものではありません。
問題なく、立ったり歩いたりできるようになっていました。
乾いて潰れていた椎間板に、水分が補給されたおかげで痛みが和らいだとしか思えませんでした。
これはいいと思った私は、それから毎日、たっぷりの水を飲むように努めました。
朝いちばんにお湯を沸かしたら、それを魔法瓶に入れておきます。
それで、ミネラルウォーターや水道水を割って、白湯にして飲むのです。
外出中は、ペットボトルを持ち歩いて飲みます。
小まめに飲めば、1日に4Lの水を飲むことは、それほど苦痛ではありません。
その結果、わずかに残った痛みも、しだいに軽快し、交通事故に遭う前のようにしっかり動けるようになりました。
現在は、腰がよくなったために、水の摂取量は、1日2L程度までに減らしています。
いずれにしても、「水分が不足することで腰痛が起こる」というのは、盲点ではないでしょうか。
私の知人の30代の男性は、武術の影響で慢性腰痛に悩んでいました。
そこで、水飲みを試してもらったところ、腰痛がすっかり楽になったと喜んでいました。
腰痛で悩んでいて、体が乾きぎみのかたは、水飲みを試してみてはいかがでしょうか。
新陳代謝を活発にして免疫力を高め腰痛を改善(加圧治療院院長・蘆原紀昭)
水飲みは、最高のデトックス(毒出し)です。
特に、胃腸の働きを高めて便秘を解消します。
胃腸が活発に動くことは、腹筋や腰周りの筋肉強化につながるのです。
また、水分不足によりドロドロだった血液がサラサラになり、全身の血流が改善。
新陳代謝が活発になるだけでなく、免疫力も高まります。
こうした総合的な作用によって、椎間板にもよい影響がもたらされました。
水を飲むことと、腰痛を改善することは、決して無関係ではありません。
北川貴英
システマ東京主催。公認システマインストラクター。各地のカルチャーセンターなどで年間400コマ超のクラスを実施している。さらに、養護施設、医療系の研修、学術学会にとどまらず、テレビやラジオなどでシステマを紹介し普及に努めている。『Dr.クロワッサン 呼吸を変えるとカラダの不調が治る』(マガジンハウス)など、著書・監修書多数。