解説者のプロフィール
そばの実などの雑穀や野菜のおかげで常に元気
私は、大学を卒業した2003年から、内科や小児科などを総合的に診療する「家庭医」として、京都府や滋賀県大津市内の病院に勤務していました。
昨年の春、大津市北部の山間部にある葛川診療所に着任。
住民の過半数が65歳以上という地域なので、診療所で週4日診察するほかに、高齢者世帯の訪門も行っています。
残りの週3日は市街地に戻り、カウンセラーとしての活動をしています。
周囲からは「バイタリティの塊」「行動力がある」「何事にも一生懸命」といわれます。
十数年前の私なら、山間部の診療所を1人で切り盛りしたり、街と村を頻繁に往復したりするなど、とても無理でした。
ここまで元気に動けるのは、食事を変えたおかげでしょう。
10年ほど前から、私は肉や魚、卵などの動物性食品をほとんど食べず、そばの実やヒエ、アワ、キビといった雑穀と、野菜などの植物性食品を中心とした食生活を続けているのです。
きっかけは、海外に住む妹から、マクロビオティック(穀物や野菜、海藻などを中心とする日本の伝統食をベースとした食事)について話を聞いたことです。
もともと料理が好きだった私は、「動物性食品を全く使わずに食卓が成り立つとは、いったいどういうことだろう」と興味を持ちました。
そんななかで、さまざま雑穀を使って食事を作る「未来食つぶつぶ」を知りました。
雑穀というと、白米に混ぜるのが一般的かもしれません。
ところが、雑穀と一口にいっても、そばの実やアワ、ヒエ、キビ、アマランサス、キヌアなど種類がたくさんあり、色や食感もそれぞれ違います。
特徴を生かすことで、和洋中、さまざまなおかずやスープ、スイーツなど、あらゆる種類の料理を作ることができます。
減塩ではなく「適塩」の味付けなので、物足りなさは感じません。
肉や魚がないことに、気づかない人も多いほどです。
甘味料も、五穀ご飯で作る甘酒です。
これは、スイーツ作りにも活躍します。
ツヤツヤ肌をキープ!年齢より若く見られる
つぶつぶ料理の奥深さにすっかり魅了された私は、レシピ本を買い、実践しました。
料理も食べるのも好きなので、楽しくてしかたありません。
気がつけば、自宅から動物性食品や砂糖がなくなっていました。
食を変えてから、体が変わってきました。
まず、お通じです。
それまでも便秘症ではありませんでしたが、忙しい日や長距離を移動する日は、出ない日もありました。
それが、雑穀を食べるようになってからは、毎日決まってお通じがあります。
腸内環境が整ったおかげでしょうか。
肌荒れや吹き出物などのトラブルのないツヤツヤの肌をキープできており、年齢よりも若く見られます。
冷え症もなくなりました。
大学卒業後くらいから、体が冷えるようになり、靴下の重ねばきや半身浴、使い捨てカイロなど、さまざまな対策を講じましたが、あまり効果が得られませんでした。
ところが、今ではすっかり冷えを感じなくなり、いつも足先までポカポカです。
それに伴い、ひどかった生理痛もなくなりました。
今では、生理があることを忘れ、出先で慌てることもあるほどです。
体調の悩みがなくなった結果、行動力がつき、興味の赴くままにさまざまな場所に出かけられるようになりました。
職場と自宅の往復だけでは得られない経験を、たくさん積むことができました。
現在の職場への赴任も、その結果できたご縁で実現したものです。
興味本位で食を変えたことで、人生まで変わってしまったことに、我ながら驚いています。
さて、雑穀を初めて食生活に取り入れるかたは、最初はどのように扱えばいいか、わからないと思います。
まず、雑穀は、国産無農薬か有機栽培、もしくは自然栽培の物を選んでください。
安全性とおいしさに差が出ます。
そばの実は、雑穀のなかでもポピュラーで使いやすく、クセもないので初心者にお勧めです。
弾力があってツルンとした食感が特徴。
たんぱく質が多いので、コクとうまみが味わえます。
ご飯のように炊いてから、豚ひき肉のかわりに使います。
私のお気に入りのつぶつぶレシピは、つくだ煮です。
そばの実とアオサ、しょうゆ、酒、水でコトコト煮詰めるだけ。
ご飯のお供に最適です。
時間のあるときには、ひと手間かけてギョウザを作ります。
肉が好きな人にも、必ず「おいしい!」とほめられます。
炊いたそばの実を、野菜と炒め合わせてしょうゆを回しかけるだけでも、おいしいおかずになります。
会食が続いたり、疲れを感じたりしたら、雑穀を食べてみてください。
ひき肉をそばの実に替えるだけでも、体は楽になると思います。
齋藤彩
葛川診療所所長。1978年、青森県生まれ。大学で学んだ西洋医学のほか、東洋医学にも造詣が深い。家族との関係から心理的ブロックを読み解く家族療法や、カウンセリングも行う。家庭医療専門医。内科認定医。趣味は、着物、料理、旅行。診察も着物で行うため、患者さんがリラックスし、会話が弾む。