【お悩み】「音痴を直してカラオケに行きたい」
退職して数年、友だちもなく、さみしい日々を送っていましたが、パートを始めて、親しく話す仲間ができました。そこで、カラオケに誘われるようになったのですが、ひどい音痴なので断っています。せめて人並みに歌えるくらいになってから行きたいのですが、どうしたらいいでしょうか。(60代男性)
回答者のプロフィール

高牧康(たかまき・やすし)
●音痴矯正.com
http://sm-onti-kyosei.com/
BCA教育研究所主宰 ヴォイスティーチャー 。
国立音楽大学音楽学部声楽学科卒業。
発声指導法の開発と臨床研究、音痴矯正、吃音矯正、誤嚥予防音楽療法などのメソッドを考案・開発。全国各地に赴き、講演や指導の活動を行っている。
誤嚥性肺炎を予防する「のどピコ体操」は各地から絶賛されている。
音痴になっている原因は二つ!
「ひどい音痴」がお悩みとのことですが、音や音程を聴き分ける音感に問題のある人は、実は、さほど多くはありません。
大半の人は、周囲から「音痴だね」「歌が下手だ」などと言われた経験がきっかけで、自分は音痴だと思い込んでいる「ニセ音痴」なのです。
では、どうして歌を正しく歌えないのでしょうか。原因は、二つあります。
一つは、歌をしっかりと覚えていないから。「有名な歌だから歌えるだろう」「よく聞いた曲だから歌えるはず」と思って歌い出せば、当然、歌詞はあやふやでリズムや音程、メロディーも調子外れになります。いわば「うろ覚え音痴」です。
二つめの原因は、発声できる音域が狭いこと。歌謡曲や流行歌は、最低でもドレミファソラシドの1オクターブの音域を出せないと正しく歌えません。
童謡が歌いやすいのは、1オクターブ以内の音域で作曲されているからです。ここでは、音域が狭くて歌の音程が外れてしまう人のことを「発声音痴」と呼ぶことにしましょう。
うろ覚え音痴と発声音痴の両方を併発している人もいますが、どちらも自分で訓練して直すことができます。
音痴の治し方
うろ覚え音痴を克服するには
うろ覚え音痴から脱出するには、歌いたい曲を何度も何度もくり返し聴いて、完全に覚えること。
歌は、記憶の芸術です。
100回以上は聴いて、歌詞も暗唱できるくらい聴き込んで、完璧に覚えてください。
うろ覚え音痴はせっかちな性格の人に多く、歌だけでなく、人の話もじっくり聞こうとせず、勝手に動きがちです。
歌を覚えるときは、中途半端な段階で口ずさむと間違った音程を覚えてしまう恐れがあるので、まずは黙って曲を聴きます。
カラオケには伴奏は入っていますが、一般に歌のメロディーは入っていません(小さな音でメロディーが流れる「ガイドメロディー」という機能がついたカラオケもある)。
ですから、伴奏だけを聴いて歌えるよう、歌詞もメロディーも完璧に覚えないとダメなのです。
発生音痴を克服するには
次に、発声音痴から卒業するには、自分が出せる音域を広げなくてはいけません。
そのために有効なトレーニングが、「裏声」の発声練習です。
その理由を説明しましょう。
歌うときはのどにある声帯が伸び縮みして、音程をコントロールしています。
声帯が伸びると高音が、縮むと低音が出ます。
歌声を出すときは声帯を伸ばす筋肉が働き、地声で話すときは声帯を縮める筋肉が働きます。
音痴の人は、普段から歌を歌わないため、声帯が固まっています。
そのため高い音程が出ないので、まずは硬く縮んだ声帯を伸ばすストレッチが必要なのです。
裏声を出すと声帯がよく伸び縮みするようになり、同時に、のど全体を鍛える効果も期待できます。
新聞を裏声で読む、知っている歌を裏声で歌う、裏声でドレミファソラシドを発声する、などの練習をしましょう。
声帯が伸びるようになると、自分が出せる音域が広がり、歌の音程を合わせやすくなります。

カラオケデビューに向けてのアドバイス
最後に、カラオケデビューに向けて、いくつかアドバイスをしておきましょう。
選曲は、自分が青春時代に聴いた流行歌から選ぶのがお勧めです。
とはいえ、洋楽は難しいので、避けましょう。
誰もが知っているヒット曲や、懐メロとしておなじみの曲をマスターしてください。
曲を選ぶさいは、男性なら女性歌手の曲を、女性なら男性歌手の曲を選ぶのがコツです。
異性の曲だと、女性は低めの音域で歌うことができ、男性も元曲から1オクターブ下げて歌えるので、らくに声が出ます。
そして、人前で披露する前に、ぜひ「一人カラオケ」で予習をしてください。
そのときの手順は、以下のとおりです。
①カラオケだけを聴く
②カラオケに合わせて口パクで歌う
③カラオケに合わせて歌う
この3ステップで、自分の課題曲を練習するのです。
これだけ準備しておけば、万全です。
そしていよいよ、人前で歌うときが来たら「よろしければ皆さんもご一緒に」と、一言そえて歌いましょう。
みんなで歌って盛り上がれば歌いやすいですし、途中で失敗しても誰かがカバーしてくれます。
ぜひ、歌を通して、楽しく新しい仲間との交流を深めてください。
