私の治療経験上、「歯が痛い」と訴えて歯科医院に来る患者さんのうち、約半数はムシ歯が原因ではありません。
驚かれるかもしれませんが、目立ったムシ歯がないにもかかわらず、歯痛を訴える患者さんは多くいらっしゃいます。
では、何が痛みを引き起こしているのでしょうか。
歯周病や知覚過敏も多いですが、無意識に行っている「嚙みしめ」も無視できないのです。
「嚙みしめぐせ」自体は無意識にしていることでもあり、矯正するのは難しいのですが、それによるトラブルを緩和する方法があります。
ここでご紹介する「耳たぶ回し」です。
これは耳たぶをひっぱって回すことで、過度に緊張しているあご周辺や側頭部の筋肉をほぐす方法です。
肩こり・片頭痛を改善する「耳たぶ回し」のやり方

耳たぶ回しのポイント
「耳たぶ回し」のポイントを述べましょう。
まず両耳たぶを両手の親指と人さし指でつまみます。
そのさい、指に力を入れすぎないように注意します。子どものほっぺたを「ムニュッ」とするときくらいの力加減です。
そして、耳たぶをひっぱりながら、大きく円を描くようにして時計回りや、反時計回りに各10回ずつ回します。
問題がない人は、このように耳たぶを回しても、ぜんぜん痛くないものです。
ところが、嚙みしめが習慣化している人は、かなりの痛みを感じるはずです。
なかには耳たぶを回しているときに、ゴリゴリと音がする人がいるかもしれません。
痛みや、そのほかの違和感があれば、無理はせずに「少し痛いけど気持ちいい」くらいの力で行いましょう。
こうして耳たぶ回しをすると、終わったころにはぐにゃぐにゃとまるで赤ちゃんの耳のように軟らかくなり、頭の中心辺りがポカポカと温まります。
口が開きやすくなる感覚を覚えるかたも多いです。
マッサージをしたときのように血行がよくなり、緊張していた口周辺や側頭部、首や背中の筋肉がゆるむためと考えられます。
耳たぶ回しは1回30秒、1日に5回ほど、朝起きた後や夜寝る前、できれば食事の前にも行うのがお勧めです。
1週間ほど続けると、耳を回すさいの痛みがしだいに起こらなくなっていきます。
解説者のプロフィール

山嵜智浩(やまざき・ともひろ)
●かしの木歯科医院
東京都東大和市上北台3-411-4東大和サニーコーポ102
TEL 042-562-0646
http://www.kashinoki-dc.com/
かしの木歯科医院院長。
2002年日本大学歯学部卒業後、2010年かしの木歯科医院開業。
診察で患者の耳たぶを回して、あごや耳の近くの筋肉の状態を調べている。