解説者のプロフィール

村上祥子(むらかみ・さちこ)
料理研究家。管理栄養士。福岡女子大学国際文理学部食・健康学科客員教授。1985年より、福岡女子大学で栄養指導実習講座を担当。生活習慣病の予防・改善のために、栄養バランスのよいカロリー控えめのレシピを数多く考案。著書多数。
●空飛ぶ料理研究家 村上祥子のホームページ http://www.murakami-s.jp/
数あるフルーツ酢の中でも「イチオシ」
昔から、酢が体にいいことは知られており、私たち日本人は、その酢を、酢の物という形で欠かさず取ってきました。酢の物は、和食になくてはならない献立の一つです。
ところが最近は、大人も子どもも酸っぱいものを嫌がるようになり、家庭の食卓から酢の物が姿を消しました。そうした「酢の物ばなれ」を危惧し、私が数年前から提案しているのがフルーツ酢です。
酢に、新鮮なフルーツを漬けるのがフルーツ酢の基本的な作り方です。こうすると、フルーツの甘味と香りが酢の酸味を和らげてくれます。酸っぱいものが苦手な人でも、フルーツ酢ならおいしく取ることができるのです。
私が考案したフルーツ酢は10種類以上。その中で、現在最も人気が高いのが、「レモン酢」です。
数あるフルーツ酢の中でも「イチオシ」といってよく、教室などでもよく勧めているフルーツ酢です。私もレモン酢を愛飲していますが、おかげで、多忙な生活が続いていても疲れがたまることなく、良好な体調を維持しています。

村上祥子先生手作りのレモン酢。電子レンジですぐできる
レモン酢の作り方
レモン酢の作り方は、簡単です。電子レンジに対応した耐熱ガラスの保存瓶は、さまざまな容量のものがありますが、ここでは800mlの場合でご紹介します。

【用意するもの】(出来上がり約800ml分)
・保存瓶……1本 電子レンジ対応の耐熱ガラス瓶を用意する。
※レンジ対応の保存瓶がない場合は、対応容器(どんぶりなど)でレンジにかけてから、通常のガラスの保存瓶に移せばよい(作り方④参照)。
【材料】
・レモン……180g(1個半~小2個くらい)
・酢……400ml
・氷砂糖……180g
※レモンは、皮ごと使いたいので、できるだけ防腐剤やワックスの少ない国産のものを使用してください。
※酢は、米酢、玄米酢、黒酢などの穀物酢を使用する。リンゴ酢などの果実酢でもよい。
※氷砂糖の代わりに、黒砂糖、上白糖、きび砂糖などでもよい。その場合は、沈殿しやすいので、こまめによくかき混ぜること。
※分量はあくまでも目安。保存瓶の大きさ、好みに合わせて増減可能。

【作り方】
❶レモンは、お湯をかけながら、表面をタワシでゴシゴシ洗い、ペーパータオルで水分を取る。

❷レモンを幅0.5~1cmの輪切りにする(レモンの厚さはお好みで)。

❸保存瓶に、レモンと氷砂糖を入れ、酢を注ぐ。

❹瓶にふたはせずに、電子レンジにかける。500Wなら1分20秒程度、600Wなら1分程度、750Wなら50秒程度。この時点で氷砂糖が溶けることはない。

※電子レンジ対応の保存瓶がない場合
電子レンジ対応の別の容器(ボウル、どんぶりなど)に材料を入れてレンジにかけてから、通常のガラスの保存瓶に移す。
◎電子レンジを使わなくても作れる!
保存瓶に材料をすべて入れてふたをし、常温で2週間以上置いたら出来上がり。電子レンジにかけるのは、レモンの細胞を軟化させて出来上がりを早くするためなので、出来上がる時間の違いだけで、味や効果は変わらない。

【飲み方】
■水で割って飲む
レモン酢大さじ1~2杯を100~150mlの水やお湯で薄めて飲む(濃度はお好みで)。無糖の炭酸水や紅茶、牛乳などで割って飲んでもおいしい。

■漬けたレモンも食べよう!
漬けたレモンにも、まだ栄養成分が残っているので、無駄なく活用しよう。レモンの皮の苦味が減り、とても食べやすくなっているので、お茶請けなどに、そのまま食べてもおいしい。細かく刻んでヨーグルトのトッピングにしたり、サラダのドレッシングに加えたりと、工夫しだいでいろいろな料理に活用できる。

■1日に取る量の目安
レモン酢は、1日に大さじ1~3杯(15~45ml)程度が目安。それ以上の量を取っても効果が高まるわけではない。糖分が含まれるので、取りすぎには注意する。一度にたくさん飲むよりも、毎日適量を飲み続けることが大切。
保存方法と注意点
●レモン酢は常温で1年間保存ができる。
●直接日光が当たる暑い場所に置くことは避ける。
●漬けたレモンは、空気が触れない状態を保つ(下の写真参照) 。

▶レモン酢は常温で1年保存が可能だが、漬けたレモンが空気に触れた状態が続くと、レモンが劣化してカビのようなものが生えることがある。そのため、液体が減ってきた分だけ漬けたレモンを引き上げて、なるべくレモンが液体に漬かっている状態を保つようにする。レモン酢の表面にラップなどで落としぶたをしてもよい。
ビタミンCが吸収されやすい
レモンを酢に漬けることで生み出される効果は、驚くほどです。
そもそも、酢に含まれる有機酸には、体のエネルギーを作り出す働きがあります。
このエネルギー産生システムを「クエン酸サイクル(回路)」といいますが、クエン酸サイクルが適切に働くと、代謝が活発になります。それが、疲労の回復や肥満の予防に、また、血流の改善や免疫力(病気に対する抵抗力)の強化にもいい影響を与えるのです。
同様の機能性は、レモンにもあります。ですから、1日に大さじ2杯のフルーツ酢を取れば、クエン酸サイクルが十分に働くことが期待できます。
加えて、酢にもレモンにも、活性酸素(老化や病気の原因物質)の害から体を守る、抗酸化物質が豊富に含まれています。しかも、フルーツの甘味や香りが、酢の強い酸味をカバーするので、酢をおいしく取ることができるのです。
レモンと酢の組み合わせには、もう一つメリットがあります。
レモンといえばビタミンC、と呼ばれるほど、レモンにはビタミンCが豊富ですが、ビタミンCは元来、熱を加えたり、体内に吸収したりするときに、酵素などの働きによって壊れやすい性質を持っています。
しかし、酢には、そのビタミンCを壊す酵素の働きを抑える作用があるのです。つまり、レモン酢には、ビタミンCがそのままの形で、吸収されやすい状態で含まれているというわけです。
やせるためには氷砂糖が近道
意外に思われるかもしれませんが、酢と氷砂糖の組み合わせも非常に有効です。
酢に含まれる有効成分のアミノ酸は、糖によって、ピルビン酸という物質に変わります。ピルビン酸は、代謝のカギになる有機酸なので、これによって代謝が活発になるのです。
したがって、酢だけを取るよりも、氷砂糖の溶けた酢を取ったほうが、乳酸(疲労の原因物質)の分解速度が速くなって、すぐに疲れが取れるというわけです。疲れだけでなく、血糖値や血圧が改善されたり、やせやすくなったりといった健康効果も期待できるでしょう。
糖分を気にして、レモン酢に氷砂糖を入れないという人もいるようですが、やせるためには氷砂糖を入れるほうが近道、ということを覚えておいてくださいね。
レモン酢は、腸の働きを高め、便通をよくする効果もあります。効果が高いので、もともと腸の弱い人だと、おなかがゆるくなる場合もあるかもしれません。
おいしいのでたくさん飲みたくなるのですが、一度に取る量は大さじ1〜2杯を目安にし、多くても、大さじ3杯を限度にしてください。

村上先生イチ押しのレモン酢ティー
飲んでも食べてもおいしい!
レモン酢の飲み方は、そのまま飲んでも、水やお湯で薄めても、牛乳に混ぜて飲んでもいいでしょう。夏はロックやソーダ割りでもおいしく飲めます。
私が好きなのは、レモン酢を紅茶に加えた「レモン酢ティー」です。
ティーバッグで入れた紅茶に、レモン酢を大さじ1~2杯加えるだけで、格段においしくなります。私は冬になると、温かい紅茶にレモン酢をたらして飲んでいます。レモン酢ティーのおかげで、忙しい年末年始も体調をくずすことがありません。
また、毎日の料理にも、レモン酢をぜひ活用してください。
酢の物、中華料理、サラダ、肉料理に使ったり、他の調味料にレモン酢を混ぜたりして使うのもお勧めです。例えば、酢の物には酢だけを使うより、レモン酢を使ったほうが味に深みが出ておいしさも増します。サラダのドレッシングにも、レモン酢を加えるとさわやかな風味になります。
飲んでも食べてもおいしいのが、レモン酢の大きな利点です。
メタボ解消!血圧が正常値に!
最後に、実際にレモン酢を飲んで効果が出たという私の周囲の声を紹介しましょう。
私の知人(40代)は、1日3回、レモン酢などのフルーツ酢を欠かさず飲むようにしたところ、3週間で8kgのダイエットに成功しました。さらに、肌ツヤがよくなり、見違えるほどきれいになりました。また、代謝がよくなったおかげで、疲れにくくなったそうです。
また、生活習慣病に悩んでいた別の知人の男性(60代)は、レモン酢を毎日飲み始めたところ、メタボが解消。高脂血症と高血圧症もすべて改善した、と喜んでいました。
実は私の夫も、レモン酢などのフルーツ酢を毎日飲んだおかげで、最大血圧が120mmHg(正常値は140mmHg未満)まで下がって、長年の高血圧を克服したのです。
レモン酢は、今日漬ければ、明日から飲み始めることができます。手作りのレモン酢を日々の習慣にして、いつまでも元気にお過ごしください。