解説者のプロフィール

大澤俊彦
機能性食品研究、特に抗酸化食品研究の第一人者。
食事を要因とする生活習慣病誘発メカニズムの解明に関する研究を行っている。
日本AOU協会理事長、日本食品安全協会理事、日本酸化ストレス学会理事。
名古屋大学名誉教授。
レモンの皮の成分が健康のカギ
皆さんは、健康のキーワードとして「抗酸化作用」という言葉を耳にしたことがあるでしょう。
抗酸化作用は、健康維持には欠かせない作用で、活性酸素を抑える働きをします。活性酸素とは、簡単にいうと、呼吸で取り入れた酸素が体内で変化したもの。通常でも、体内の酸素の2%が活性酸素になります。
その活性酸素が、喫煙、紫外線、ストレスなどが原因で過剰になると、体に悪影響を及ぼし、動脈硬化、高血圧、糖尿病、ガン、老化などの病気や症状が引き起こされます。
私たちが日ごろ口にしている食品には、そうした活性酸素を抑える働きを持つ成分が含まれているのです。それらの成分は、抗酸化成分と呼ばれています。
私は、さまざまな食品が持つ抗酸化成分の研究に長く携わってきました。実験で、実際の作用も数多く確認しています。中でも、柑橘類は抗酸化成分の宝庫といえるでしょう。
その代表格がレモンです。
レモンの抗酸化成分は、特に皮の部分に多く含まれます。
皮のすぐ下の白い部分にあるエリオシトリンやヘスペリジンというフラボノイド類に、活性酸素を抑える働きがあるのです。とりわけエリオシトリンには「活性酸素を抑える働きが、体内で持続する時間が長い」という特長があります。
つまり、レモンの皮も取れば、活性酸素を抑える働きがより発揮されることになります
レモン酢の作り方


抗酸化、代謝促進作用が2倍!
レモンの実の成分であるビタミンCにも、活性酸素を抑える働きがあります。この働きが、皆さんもよくご存じの、レモンのカゼの予防効果や美肌効果を発揮するわけです。
ちなみに、ビタミンCの美肌効果については、ビタミンCを取ることで、肌にハリを保つコラーゲンの合成が促進されるから、ということもわかっています。
さらに、レモンの酸味成分であるクエン酸には、代謝を上げ、疲れた体を回復させる作用があります。
クエン酸には、活性酸素の害を直接抑える働きはありません。しかし、レモンを積極的に食べてクエン酸をたくさん取れば、疲れやストレスが軽減します。それが、活性酸素をたまりにくくするでしょう。
このような、レモンの有効成分を丸ごと取れる方法として注目されているのが、「レモン酢」です。
レモン酢は、皮つきのレモンを、酢に漬けて作ります。皮ごと漬ける方法なら、レモンの皮に含まれる抗酸化成分も手軽に取ることができます。
そのうえ、レモンと酢の組み合わせによる相乗作用や補完作用(一方が他方を補って効果を高める作用)が期待できます。
相乗作用としては、レモンと酢の双方に抗酸化作用や代謝を促進する作用があります。つまり、レモン酢にはそれらの有効作用が2倍期待できるわけです。
例えば、レモン酢の血圧を下げる効果を見てみましょう。
レモンのフラボノイド類には、悪玉コレステロールの酸化を抑えて動脈硬化を防ぎ、血管をしなやかにする働きがあります。酢に含まれる化合物のアデノシン酸には、血管を拡張する作用があります。
レモン酢を飲むと、この二つの働きがもたらされるので、血圧を下げたり、血圧を安定させたりする優れた効果が発揮されます。
脳梗塞や心筋梗塞の予防に
レモンと酢の補完作用としては、レモンに含まれるビタミンCの吸収を酢が助けます。ビタミンCは、熱を加えたり、体内に吸収されたりするさい、壊れやすい性質があるのですが、酢には、それを抑える作用があるのです。
ほかにも、レモンには、酢のミネラル成分の吸収をよくする作用があります。
レモン酢に使用する氷砂糖も、酢の働きを高めるでしょう。酢に砂糖が溶けることで、もともと酢が持っている「代謝を高める作用」がさらに活発になることが考えられます。
以上のような効果が期待できるレモン酢は、多くの病気や症状の改善に役立つ可能性が高いでしょう。
特に、脳や心臓の血管が詰まって起こる脳梗塞や心筋梗塞、高血圧や高脂血症、糖尿病の合併症など、動脈硬化が引き金になって起こる病気を抱えている人に、レモン酢を推奨します。
病気がちだったり、疲れやすかったりして抵抗力が落ちているときにタイミングよく取ると、早めの回復が期待できそうです。ダイエットにも、レモン酢の代謝を上げる作用が大いに役立つでしょう。ぜひ、皆さんも活用してください。