筋肉量が少ないのは免疫力が低下した状態!
私のクリニックには、ガンの患者さんが多く訪れます。
なかには余命を宣告されたかたや、他院での抗ガン剤治療に耐えきれず、西洋医学以外の治療法を求めてくるかたもいます。
こうした患者さんにお勧めして、大きな効果をもたらしている治療法の一つが、科学的な根拠に基づいた食事療法です。
基本は、「高たんぱく、低糖質、低脂肪、高ビタミン・ミネラル」。
そのうえで、体を冷やす食べ物は避け、温める物をとるのがポイントです。
治療と並行し、こうした食事療法をきちんと実践すれば、告知された余命をはるかに超えて元気で暮らし、抗ガン剤を使わずにガンを克服することも、不可能ではありません。
ガン治療で大切なのは、ガンを見るだけでなく、患者さんの状態も診ることです。
ガンと闘うための体力がどれくらいあるのかをしっかりと把握し、状態に合った治療法を提案します。
そのため、私のクリニックでは、最新の機器で体の組成を詳しく調べます。
これでガン患者さんの筋肉量を測ると、多くは、健康な人の7~8割にとどまっています。
これは何を示しているのでしょうか。
実は、筋肉の量は、血液中のリンパ球数と比例しています。
リンパ球とは、体内の免疫機能の中心的存在を担う、白血球の一つ。
リンパ球が少ないということは、ガンに対する免疫力が低下した状態を表すのです。
ガンの患者さんは、ただでさえ体力が低下しているところに抗ガン剤などを投与され、消耗しています。
食欲不振になると栄養状態も悪化します。
すると、筋肉量がどんどん減少し、その結果、免疫力も低下するという悪循環が起こるのです。
重要なのは、たんぱく質をしっかりとり、栄養状態を改善すること。
そのうえで、適度に運動をすれば、ガン患者さんでも筋肉量を増やすことが可能となり、免疫力が格段にアップします。
治療効果も上がり、副作用も起こりにくくなるのです。
食事の最初にたんぱく質をとることが重要!
そこで、筋肉をつくる良質なたんぱく源として、特に私がお勧めしているのが、卵です。
たんぱく質の〝質〟を測る指標として、「アミノ酸スコア」というものがあります。
体内で作れないため食事から摂取する必要がある、9種類の必須アミノ酸のバランスを見るものです。
卵はこのスコアが最上限の100で、理想的なバランスです。
しかも卵は、肉類に比べ、ガンのリスクを引き上げる飽和脂肪酸が少ないので、たんぱく質を摂取するに当たり、最も適した食品といえるのです。
私自身、1日3個は卵を食べています。
ガン患者さんには、1日に最低3個、できれば5個と指導しています。
1~2個では闘病にとても足りません。
1日に必要なたんぱく質の摂取目安量は、体重1kgにつき、1g。
60 kgの人なら60gです。卵1個には、およそ6gのたんぱく質が含まれますから、1日5個の卵で30g、すなわち必要量の半分がとれます。
残りを豆腐や納豆などのダイズ製品や、鶏肉、青魚などから補うのがベスト。
たんぱく質は健康な人でも不足しがちです。
ガンと闘うには、なおさら意識してとることが重要なのです。
日本人は従来、ご飯におかずとみそ汁、漬物、といったような献立を基本としてきました。
しかし、ガンの患者さんは食欲がなく、食べられる量も限られています。
これまでの習慣は捨て、真っ先にたんぱく質をとることを心がけてください。
そのあとで、野菜や海藻、キノコなどをとり、ご飯やパンは口直し程度の少量で十分です。
卵は幸い、さまざまな調理法があるので、飽きずに食べられます。
ただ、生卵は加熱した状態に比べて、消化吸収率が悪いので、ガンの患者さんにはお勧めしていません。
クリニックでの改善症例を挙げましょう。
65歳の男性は、胃ガンの手術後、抗ガン剤を投与されましたが、1度だけで副作用に耐えきれず治療を拒否。
私のもとを訪れました。卵を積極的にとる食事にして、漢方薬を服用。
現在までの4年半、再発もせず元気に暮らしています。
なお、卵を食べると血中のコレステロール値が上がるというのは誤解です。
体内のコレステロールのうち食事からつくられる分は2割程度で、ほとんどは肝臓で合成されます。
卵の影響はほんのわずかです。加えて、厚生労働省は2015年、食事によるコレステロール摂取の基準を撤廃しています。
気にする必要はありません。
卵はたんぱく質以外にも豊富な栄養素を含む、ほぼ完全栄養食です。
積極的にとり、丈夫な体づくりに役立ててください。
星野惠津夫
空海記念統合医療クリニック院長・がん研有明病院漢方サポート科元部長。