左右の股関節の偏りが痛みやしびれの発端
脊柱管狭窄症のかたの場合、体が必ずといっていいほど左右、あるいは、前後に傾いているものです。
また、姿勢や歩き方を拝見すると、体が左右に横揺れしたり、ガニ股ぎみになっていたりするなど、左右のどちらかの肩が下がっていることが多いのです。
なぜ、このような現象が起こるのでしょうか。
実は、これは、股関節の不調によるものです。
股関節は、骨盤の外側にある丸い臼のような形をした部分(寛骨臼)に、太ももの骨(大腿骨)の上部(頭部)がはまり込むしくみになっています。
ですから本来、股関節の構造は左右対称です。
ところが、運動不足の生活が続いたり、ふだんの姿勢が悪かったり、左右どちらかの足だけを上にして組んでイスに座っていると、股関節の周囲の筋肉が衰えたり、柔軟性を失ったりします。
その結果、左右の股関節に偏りが生じるのです。
ほかにも、過食による肥満や、体を冷やす生活なども、この傾向を助長します。
股関節は、骨盤のくぼみに、太ももの骨がはまり込んでいるので、股関節に偏りが生じると、骨盤にもゆがみが生じます。
その結果、骨盤が左右に傾いたり、前方に倒れたり、前後にゆがんだりするのです。
こうした股関節と骨盤のゆがみによって、歩き方までおかしくなってしまいます。
骨盤のゆがみは、背骨にも悪い影響を及ぼします。
なぜなら、骨盤の周りには、背骨につながる筋肉がいくつもあるためです。
例えば、股関節から骨盤、背骨へとつながっている大腰筋、骨盤から背骨につながる脊柱起立筋などです。
骨盤がゆがむと、全身のバランスを取るために、これらの筋肉の一部が引っ張られます。
その影響で、椎骨にズレが起こります。
背骨というのは、24個の椎骨がブロックのように積み重なって構成されています。
腰の部分に当たる五つの骨を腰椎といい、腰椎は1番から5番まであります。
脊柱管狭窄症の人は、腰椎の特に4番と5番の辺りにゆがみが多く見られます。
そのゆがみによって、4番と5番の周辺の脊柱管が圧迫され、足腰に痛みやしびれが起こると考えられます。
数m歩けなかった人が30分の散歩も楽々!
そこで、脊柱管狭窄症の症状を改善するためには、骨盤のゆがみを正す必要があります。
そして、骨盤のゆがみを正す際の大前提となるのが、「股関節の調整」です。
なぜなら、もともと股関節が偏ったために、骨盤のゆがみも起こっているからです。
つまり、股関節の偏りという根本原因を正さないかぎり、骨盤のゆがみをまともに矯正することはできません。
私が提唱している「川井筋系帯療法」は、痛みやしびれが生じる原因を、筋肉の系列「筋系」から判断します。
そして、そこにつながる筋肉や骨格のゆがみを正して、体を正常な状態へと戻していきます。
そのために実践する方法が、「骨盤ゆらし」です(やり方は図を参照)。
骨盤ゆらしは、あおむけになって両ひざを抱え、骨盤を中心にゆらゆらと軽くゆさぶるという方法です。
このようにして股関節や骨盤周りの筋肉をゆるめることで、股関節と骨盤を本来の位置に戻していきます。
股関節と骨盤のゆがみが改善されると、脊柱管狭窄症の足腰の痛みやしびれがよくなっていきます。
骨盤ゆらしを実践した人たちからは、「数m歩くのもつらかったのに、今では30分の散歩が難なくできるようになりました」など、多くの改善例が報告されています。
今回ご紹介する方法は、私が自ら施術している方法をより簡単にして、患者さんが自宅で行える形に改良したものです。
骨盤ゆらしは、1日2回くらい行うといいでしょう。
起床時や入浴後などに行うことがお勧めです。
ポイントは、がんばり過ぎないことです。
「気持ちいいな」と思う程度に、ゆっくりと動かすように心がけてください。
骨盤ゆらしのやり方

腰痛全般にも効果がある

解説者のプロフィール

川井太郎
川井筋系帯療法治療センター院長。独自の手技療法「川井筋系帯療法」を確立し、痛みの原因である体のゆがみを改善することで成果を上げている。国際医療福祉大学大学院保健医療学修士、あん摩マッサージ指圧師、米国アンチエイジング医学会認定ヘルスケアプラクティショナー、日本抗加齢医学会認定指導士。渋谷本部のほか、横浜、船橋、大宮、名古屋、札幌に系列治療センターあり。
●川井筋系帯療法治療センター
http://kawaikinkeitai.co.jp/tokyo/