多くの人は2〜3ヵ月で痛みやしびれが軽快!
脊柱管狭窄症は、背骨の中にある神経の通り道(脊柱管)が狭くなって起こる病気です。
脊柱管がなんらかの原因で狭くなると、神経や血管が圧迫され、腰や足に痛みやしびれが現れます。
悪化すると、長く歩くことが困難になります。
当院には、病院の治療を受けてもなかなか症状が改善しないという脊柱管狭窄症の患者さんが、多数来院されています。
そのような患者さんに、私が指導しているのが、今回ご紹介する「前後開脚」です。
やり方を覚えれば、いつでも実行できるセルフケア法です。
これを熱心に行っている人の多くは、始めて2〜3ヵ月で、痛みやしびれが軽快しています。
では、前後開脚がなぜ、脊柱管狭窄症に効くのかお話ししましょう。
私が、脊柱管狭窄症の改善のポイントと考えているのが、「腸腰筋」です。
腸腰筋とは、大腰筋と腸骨筋と呼ばれる二つの筋肉の総称です(下の図参照)。
おなかの深部に位置し、腰椎(背骨の腰の部分)や骨盤と大腿骨(太ももの骨)をつないでいます。
主に股関節を屈曲させる働きがありますが、体重を分散させるために背骨が描くS字カーブの腰椎部分を維持する働きも担っています。
現代人は、スマートフォンやパソコン操作などが原因で前傾姿勢になる傾向があります。
そうした悪い姿勢が続くと、腰椎のS字カーブがくずれ、最終的にネコ背になってしまいます。
その際、正しい姿勢を保とうと踏ん張ってくれるのが、腸腰筋です。
しかし、腸腰筋にも限界があるので、長続きはしません。
疲れがピークに達すると、かたく縮んでしまうのです。
すると、腸腰筋がつながっている腰椎や骨盤を、下方向に無理やり引っ張るような形になり、腰椎がつぶされ、脊柱管の狭窄を悪化させます。
さらに、腰椎や骨盤が引っ張られることで、腹圧(おなかの中の圧力)が高まります。
腹圧が高まると、内臓が圧迫されてかたくなり、それが腰への負担にもなります。
また、腸腰筋がかたくなると、その裏側(お尻側)にある筋肉(梨状筋)も緊張して、座骨神経を前後からはさみ込むように圧迫するので、腰や下半身の痛みやしびれを引き起こしやすくなります。
このように、脊柱管狭窄症の原因は、かたく縮んだ腸腰筋と深い関係があるのです。
腸腰筋とは

気持ちいいと感じる力加減で!
つまり、脊柱管狭窄症をはじめ、腰痛や座骨神経痛を改善させるためには、腸腰筋を緩めることが近道になります。
しかし、腸腰筋はおなかの奥にあるため、簡単にアプローチすることはできません。
そこで、私がお勧めしているのが、前後開脚です(やり方は下の図解を参照)。
両足の筋肉を、綱引きのように引っ張り合うことで、腸腰筋を伸ばして、緩めることができます。
ポイントは、前に出した足の太ももの裏側にある筋肉と、後ろに出した足のつけ根の腸腰筋を、気持ちいいと感じる力加減で、前後とも「同じテンションで引っ張り合うこと」です。
綱引きのように同じ力で引っ張り合うことによって、通常では伸ばすことのできない腸腰筋を伸ばして、緩めることができるのです。
慣れないうちは難しいかもしれませんが、腰をグッと落として、前後の足の突っ張り感を確かめてください。
この体勢を維持するのが難しいという人は、イスなどにつかまってもかまいません。
理想は、足を入れ替えて、それぞれ15分ずつ行うことです。
巨大な腸腰筋を芯から緩めるためには、それだけの時間が必要なのです。
どうしても時間が取れない人は、片方だけでかまいません。
その場合、症状が現れている側の足を、後ろに出しましょう。
お風呂上がりなど、血行がよくなったときに実行すると、ストレッチ効果がアップします。
前後開脚は、4年前から患者さんに指導していますが、腰や下肢(下半身)の痛みやしびれに悩む患者さんの8〜9割に効果が上がっています。
例えば、Aさん(30代・男性)は、ギックリ腰を放置したことで、脊柱管狭窄症に陥りました。
お尻から太もも、足先にかけての痛みとしびれに襲われ、長時間イスに座ることもできなくなったそうです。
そんなAさんが前後開脚を始めたところ、1ヵ月後には、痛みとしびれが取れて、長時間イスに座っても平気になったと喜んでいます。
前後開脚は、少なくとも1ヵ月は続けてください。
きちんと続ければ、必ず効果を実感できるはずです。
前後開脚のやり方
