頭部への血液とリンパの流れをよくして活性化!
脳への血液とリンパの流れをよくして、脳を活性化する簡単な方法があります。
蝶形骨を緩める「頭ほぐし」です。
蝶形骨は、目と鼻の奥に位置する、チョウのような形をした骨です。
この骨は、前頭骨・側頭骨・頭頂骨・後頭骨・顎骨など、頭部の多くの骨と連結する、頭蓋骨のリーダー的存在です。
この蝶形骨がかたくこわばると、頭部全体への血液とリンパの流れが悪くなり、さまざまな影響が出てきます。
認知症や物忘れ、耳鳴り、めまい、視力低下などは、蝶形骨のこわばりが原因の一つと考えられます。
逆にいえば、蝶形骨を緩めることで、これらの症状改善が期待できるのです。
蝶形骨が、頭部のあらゆるところに影響を与える要の骨だということは、以前からわかっていました。
しかし、蝶形骨は顔の奥にあるので、外から触れられません。
そのため、「蝶形骨の緩め方」は、医学関係者や治療家にとって、長年のテーマでした。
ごく最近、蝶形骨を緩める方法を発見したのが、健康プロデューサーの杉本錬堂氏です。
錬堂氏は、数々のひらめきと経験から独自のメソッドを考案し、「天城流湯治法」として広めています。
私は2016年に天城流湯治法に出合い、クリニックでの治療に取り入れて、絶大な効果を上げています。
今回は、錬堂氏が発見した蝶形骨を緩める方法を、皆さんにご紹介しましょう。
頭ほぐしのやり方

まぶたと口角が上がって見た目が若返る人続出
蝶形骨を緩めるポイントは、髪の生え際付近にあります。
おでこの膨らみを、真ん中から外側に指でなぞっていき、膨らみが終わるところ(おおよそ目尻の辺り)から、まっすぐ上に行って、髪の生え際とぶつかった辺りです。
加齢で生え際が変わった場合は、以前の生え際の辺りを目安にしましょう。
そこに、手の親指の先を当て、グリグリと刺激します。
指を左右に動かして、骨から周りの組織をはがすような気持ちで行いましょう。
刺激するのは、5~10秒程度でOKです。
頭ほぐしを行うと、その場で視界が明るくなったり、眠気が覚めたりといった変化が感じられます。
「頭のもやが晴れた」という声も聞かれます。
まぶたが上がって目が大きくなったり、口角が上がったりして、見た目が若返る人も少なくありません。
これは、蝶形骨が緩んで頭部全体がリラックスし、血液とリンパの流れがよくなった証拠です。
まぶたや口角が上がるのは、筋肉の緊張が取れ、本来の状態に戻るからです。
頭がボーッとするときや、頭痛・頭重感があるときに行うと、即効性があります。
先日、交通事故後の頭痛に悩む患者さんが見えました。頭ほぐしを教えたところ、頭痛が改善したと報告がありました。
脳内の血流がよくなるので、認知症の予防にもお勧めです。
すでに認知症を発症しているかたには、ご家族がやってあげるのもよいと思います。
また、蝶形骨のすぐ上には、脳下垂体があります。
脳下垂体は、ホルモンの働きを調整し、生命維持をつかさどる重要な器官です。
蝶形骨を緩めると、脳下垂体の働きが整い、全身のホルモンバランスもよくなります。
更年期障害などの不定愁訴の軽減にも役立つでしょう。
頭ほぐしは、1日何回やってもかまいません。
頭をスッキリさせたいとき、不快症状を和らげたいとき、そして認知症予防にも大いに活用してください。
認知症は、記憶をつかさどる脳の海馬の神経細胞が減っていく病気とされています。
しかし、認知症が急増したこの50年を考えると、生活習慣が関与していることは否定できません。
特に大きいのは、食事です。
添加物、農薬、遺伝子組み換え食品など、自然界にはない「毒」が口から入り、脳に沈着しているのではないでしょうか。
また、脳の血流量を減らす降圧剤や、脳に直接作用する精神薬(睡眠導入剤を含む)の乱用も影響しているでしょう。
認知症を予防するには、そのような毒を体に入れないように心がけることも大切です。
さらに、よくかんで食べることも重要です。
よくかむことは、脳への血流を促進します。上あごの骨は、脳への血流のスイッチともいえます。
咀嚼することでポンプ作用が働き、血液やリンパ液が脳に送られるのです。
逆に、咀嚼不足は脳への血流を悪くします。
「胃ろうにすると認知症になりやすい」というのは、食べ物をかまないことで、脳への血流量が減るからです。
あごの骨は蝶形骨とつながっているので、咀嚼は蝶形骨を緩めることにも役立ちます。
頭ほぐしと、よくかむことを習慣にして、脳機能のアップに役立てましょう。
解説者のプロフィール

平野薫
1987年、九州大学医学部卒業、同整形外科教室、新日鐵八幡記念病院整形外科主任医長・リハビリテーション科部長などを経て、2010年より現職。