肩や腰の痛み・しびれ目の疲れに効く!
私は、現役の精神科医であるとともに、キネシオロジー(心身のバランスを整える健康法)や、今話題のマインドフルネス(後述)の研究・指導を行っています。
今回は、キネシオロジーの一種で、心身の健康ばらしい効果を発揮する「鎖骨こすり」をご紹介しましょう。
東洋医学では、気・血・水の三つが滞りなく循環していることが、健康の証とされています。
気は一種の生命エネルギーで、血は血液、水はリンパ液などの体液を指します。
心身にストレスがかかると、最初に滞るのは気です。
この状態を、病気の一歩手前として、「未病」と呼びます。
未病のうちに治療することができれば、病気にならずに済みます。
東洋医学では、全身を流れる気を、研究や治療の対象として、鍼灸や漢方薬を発展させました。
だから、未病の段階で治療することができるのです。
東洋医学や鍼灸治療を正式に学ぶには、膨大な時間が必要です。
しかし、西洋で発展したキネシオロジーなら、正確な気の流れを知らなくても、安全かつ効果的に心身のストレスに基づく未病を改善することができます。
なかでも、鎖骨こすりはお勧めです。
このエクササイズは、体内を流れる気や筋肉など、それぞれの左右バランスの乱れを解消してくれるからです。
特に、右脳から左半身への連絡や、左脳から右半身への連絡をスムーズにします。
全身の気の流れが促され、姿勢が改善するので、自然治癒力も増強されます。
また、首や顔、頭の血液やリンパ液の滞りを解消してくれます。
血流がよくなると、肩や腰の痛み・しびれ、目の疲れなどの改善が期待できます。
リンパ液は、体内で不要になった老廃物や疲労物質を排出し、同時に免疫にも大きな役割を果たしています。
全身のリンパ節(リンパ球の待機所)のなかでも、鎖骨リンパ節は、特に重要なポイントです。
この部分の滞りを解消できれば、顔や腕のむくみが消え、感染症などの予防も期待できます。
親指と人差し指の腹をリズミカルにすべらせる
鎖骨こすりを実践し、効果のあった例をご紹介しましょう。
●Aさん(50代・女性)
Aさんは、数年前から頸椎ヘルニア(首の骨の椎間板という組織の異常で痛みが起こる病気)で左手がしびれていました。
鎮痛剤を飲んでも、マッサージを受けても痛みやしびれが軽減しませんでした。
そこで、鎖骨こすりを試したところ、その場でしびれが軽くなりました。
●Bさん(40代・女性)
Bさんは、人間関係のストレスの強かったころから、右肩が痛み出し、右腕を上げられなくなりました。
相手の顔を思い浮かべると、気持ちが乱れて痛みが増強するとのことでした。
そこで、1分ほど鎖骨こすりを行ったところ、肩の痛みが軽快し、相手の顔を思い浮かべても、痛みが増すことがなくなりました。
鎖骨こすりのやり方は、簡単です。
左の手のひらをおへそに当てて、右手の親指と人差し指で、鎖骨のすぐ下を、リズミカルにしっかりとこすります。
20~30秒、指の腹をすべらせる感じで、少し強めにこすってください(下の図解参照)。
こする前に、体の調子が悪いところをイメージし、コップ1杯の水を飲むと効果的です。
テレビを見ながら、音楽を聴きながらでもできますが、「自分は今、体を整えるために鎖骨こすりをしている」と意識し、集中して行ったほうが、さらに効果が高まります。
ところで、「今、ここ」で自分が何をしているか、客観的に気づいていることを「マインドフルネス」といいます。
一歩引いた視点から、冷静になって現実を観ることができる状態です。
そうなると、雑念やネガティブ思想から解放され、集中して鎖骨こすりに取り組めるのです。
欧米では、マインドフルネスをうつ病や不安障害の心理療法として使われています。
また、一部の大企業では、健康のために、社員の研修プログラムに採用しているところもあります。
マインドフルネスの練習には、瞑想や座禅などの正式なプログラムがお勧めです。
しかし、「自分は今、心身を整えるために鎖骨こすりをしている」と意識して鎖骨をこするだけでも、かなりの効果が得られます。
また、鎖骨こすりによって気・血・水の流れが整うと、マインドフルな(自分を客観視できる)状態になりやすくなります。
鎖骨こすりのやり方

解説者のプロフィール

藤井英雄
精神科医、医学博士、日本キネシオロジー学院顧問、マインドフルネス研究家。著書に『マインドフルネスの教科書』(Clover出版)、『ビジネスマンのための「平常心」と「不動心」の鍛え方』(同文館出版)など。