不運を引き寄せる「ネガティブ思考」の手放し方を紹介
「運を操る力」を身につけるには、不安に強くなることが前提となります。なぜなら、不安が不運を引き寄せるからです。世界最先端の研究をもとに、幸運を手に入れるための科学的な方法を解き明かした最新刊『運は操れる』より、運を操るメソッドをお伝えします。
心理学的に、不安傾向が高い人、物事をネガティブに考える人は、自分の周りで起こっている物事の変化に気づきにくくなります。また、新たな出来事を受け入れにくくなることもわかっています。
つまり、不安を抱えていると、行動する回数が減り、新しい取り組みを試さなくなり、結果的に幸運にも気づかなくなるわけです。逆に、「やっても、どうせうまくいかない」「以前も失敗した」など、否定的な現象に目が向くようになります。
何かに挑戦するときも心理的に後ろ向きのまま取り掛かるので、失敗の可能性が高くなり、うまくいかなかったときには「ほら、思ったとおりだ」「自分はツイていないから」と不運を受け入れてしまうのです。
「脱フュージョン」でネガティブ思考を手放す
そこで、不安に強くなる方法として、心理療法の現場で使われているのが「脱フュージョン」という手法です。
私の最新刊でわかりやすく解説していますが、そもそも、フュージョンとは「融合」「混ざり合う」といった意味です。たとえば、音楽のジャンルの1つであるフュージョンは、ジャズ、ロック、ラテンなどを融合させたジャンルです。
そのフュージョンに「脱」を付けた「脱フュージョン」は、混ざり合った私たちの感情からネガティブな考えを切り離し、否定的な感情に巻き込まれないようにする効果があります。
たとえば、資格試験のために週末は勉強しようと思っていたのに、ついつい寝過ごし、だらだら過ごしたうえ、「今日は出るかも」とパチンコに出かけてしまい、お金が減ったうえ、夜になってしまった……。そんな1日には、「自分は最低な人間だ」と落ち込むものです。
すると、「自分は最低な人間だ」、「どうせ勉強しても試験には受からない」、「いっそのこと受験自体をやめたほうがいいんじゃないか」といったネガティブ思考の連鎖が始まります。
当然ですが、受験しなければ合格することもなく、成果という運からは遠ざかることになります。そこで役立つのが、脱フュージョンです。
ネガティブな考えを客観視できる
最も簡単なやり方は、ネガティブな考えに得点をつけて客観化していく「採点法」と呼ばれる方法です。
自分は最低だという落胆した気持ちが、自殺を図るほどの落ち込みならば100、部屋から出たくないというくらいの感情ならば60といったふうに、そのネガティブ度合いに応じて採点していきます。
「いまの自分への落胆は、80点までひどくはないけど、50点くらいはあるな」と。このように考えるだけで、自分の感情について一歩引いて見ることができるようになります。
その結果、何が起こるかと言うと、あなたを不安にし、動揺させているネガティブな考えを切り離すことができ、感情の揺れが収まっていくのです。
実は、私はメンタリストとしてテレビでパフォーマンスするときに、脱フュージョンを反対方向から活用しています。
人は怒りの感情に支配されていると、目の前のことにしか集中できなくなり、不安が高まると目の前のことにとらわれ、注意力が散漫になって物事を広く見ることができなくなるからです。
私がテレビの「ババ抜き対決」で負けない理由
この性質を利用すると優位に立てるので、「ババ抜き対決」(お互いにジョーカーを含む、5枚のトランプのカードを目の前に並べ、先攻後攻で1枚ずつ引いていく。最後までジョーカーが手元に残った側が負け)でよく使っています。
ゲームが始まり、相手が5枚の手札を並べたとき、「そんなに簡単な配置でいいんですか?」と挑発すると、性格にもよりますが多くの相手はイラッとして、怒りの感情が表に出ます。すると、無意識のうちに視線がジョーカーのほうに向かうのです。
あるいは、ジョーカーを引いたらモノマネをするという罰ゲームが設定されている場合、「モノマネ、得意なネタがあるんですか?」など、相手が負ける前提で雑談を始めます。こちらの自信を暗に伝えることで、相手の心では不安が高まります。
自分のジョーカーの位置はここでいいのか、DaiGoはなぜあんなに自信満々なのか、何か仕掛けがあるのか、もし負けたらモノマネをするのは嫌だ、など、脳はネガティブなことに反応し、相手は勝手に不安の渦に追い込まれていきます。
その結果、目の前の勝負に集中できず、ミスをして自滅していくのです。
不安を歌に変えて吐き出し、切り離す
一方、私が相手から怒りや不安をあおるような仕掛けを受けたときは、その場で脱フュージョンを行います。テレビ的にも盛り上がるのは、思考を歌ってみる「歌唱法」です。
不安からイライラするなら、「いらーいらーすーるー♪」という具合です。非常にバカバカしいと思われるかもしれませんが、だからこそ、自分の感情を切り離すことができ、笑いとともに不安を遠ざけることができます。
もし、「自分はダメな人間だ」と落ち込んでいるなら、そのフレーズを好きなメロディに乗せて歌ってみましょう。小声でも、大声でもかまいません。すると、ネガティブな思考と一気に距離が取れるようになります。
ポイントは、不安やネガティブな思考を言葉として外に出すことです。不安を心の中に抱え込み考え続けていると、深刻な事態に陥っているような感覚がどんどん増していきます。
ところが、言葉にして外に出す、しかも歌にして歌うことで不安を客観視すると、人生を左右するほどの重大事ではないことに気づけるのです。
ちなみに、脱フュージョンにはほかにも、怒り、悲しみなどの感情を「怒りくん」「悲しみさん」というように擬人化して処理する「擬人法」、自分が駅のホームにいると仮定して走ってきた貨物列車に次々とネガティブな感情を放り込んで、遠ざけていくイメージを膨らませる「列車法」などといった手法もあります。
いずれの手法もコミカルな印象を受けるかもしれませんが、どれもボストン大学など、一流どころの心理学部の研究で効果的だと立証されている方法です。
それぞれにある種のバカバカしさが残されているのは、不安やネガティブな思考を笑いに変え、リラックスさせる狙いがあるのでしょう。
心にモヤモヤを感じたら、脱フュージョン。ぜひ試してください。
解説者のプロフィール

メンタリストDaiGo
慶應義塾大学理工学部物理情報工学科卒業。人の心を作ることに興味を持ち、人工知能記憶材料系マテリアルサイエンスを研究。英国発祥のメンタリズム(人の心を読み、操る技術)を日本のメディアで初めて紹介し、日本唯一のメンタリストとして多くのテレビ番組に出演。その後、活動の枠を広げて、企業のビジネスアドバイザーやプロダクト開発、作家、大学教授として活動中。趣味は1日10~20冊程度の読書、猫と遊ぶこと、ニコニコ動画、ジム通い。ビジネスや話術、恋愛や子育てまで、幅広いジャンルにおいて、人間心理をテーマに執筆した著作は累計200万部を突破。
「脱フュージョン」は、ネガティブな考えを切り離し、否定的な感情に巻き込まれないようにする効果がある