解説者のプロフィール

本橋 登
1940年、東京都生まれ。
東北大学大学院薬学研究科修了。薬学博士。
明治薬科大学教授、明治薬科大学理事を歴任。
現在は、インド国立大学博士論文審査官。
フルーツ博士として、テレビやラジオ、書籍、雑誌などでおなじみ。
血圧を下げてむくみを解消!
バナナ酢は、さまざまな効能を持った健康食です。バナナ酢を摂取することで、多くの健康効果が期待できます。それらの働きは、どのような成分によってもたらされるのか、詳しくわかりやすくお話ししましょう。
まず挙げられるのが、バナナによる効能です。
バナナには、ペクチンやセルロースなどの食物繊維が、非常にバランスよく含まれており、便通を促してくれます。
また、バナナに含まれるオリゴ糖は、大腸の調子を整える善玉菌・ビフィズス菌を増やします。すると、腸内環境が改善され、腸の働きもよくなるので、食物繊維の効果と相まって、便秘解消を促してくれるのです。
バナナには、100g中、21・4gの糖質が含まれています(『五訂増補食品成分表』より)。この豊富な糖質は、疲労回復に役立ちます。
さらに、バナナは100g中360mgのカリウムを含んでおり、いわば、「カリウムの宝庫」といってもいいフルーツです。カリウムにはナトリウムの排出を促し、血圧を下げる効果があります。また、カリウムは尿の出をよくする利尿作用があるので、むくみの解消に役立ちます。
ビタミンB6も0・38mg含んでいます。ビタミンB6は、健康な皮膚を作るのに欠かせないビタミンです。不足すれば、皮膚炎を起こしたり、脂っぽい肌になったりして、肌に不調をもたらす恐れがあります。バナナは、フルーツのなかでも、驚くほどビタミンB6を豊富に含んだ食品なのです。
次に挙げられるのが、酢による効能です。
酢に含まれる酢酸には、血圧を抑制する働きのあることが、さまざまな研究によって明らかになっています。血圧が上がる有力な要因として、塩分のとりすぎが挙げられますが、料理に酢を使うと、少ない塩分量でも味が引き立つので、無理なく減塩を実行できます。その点からも、降圧効果が得られるでしょう。
また、酢は、カルシウムの吸収を促す働きもあるので、継続的に摂取すれば、骨粗鬆症の予防にもつながります。
さらに、酢には食欲を抑制するフェニルアラニンやバリン、体重減少を促進するリジンやメチオニンといったアミノ酸が豊富に含まれています。
これらの機能性成分が、ダイエット効果を高めてくれるでしょう
体内の脂肪分がどんどん燃える!
さらに、バナナ酢を作るときに使われる黒砂糖の効能も見逃せません。
黒砂糖には、100g中、1100mgのカリウムが含まれています。その量は、上白糖の約550倍の量です。カリウムには、すでにふれた血圧降下作用や、むくみの解消効果などのほかに、腸のぜん動運動を活発にさせて便通を促す効果もあります。
亜鉛も100g中、0・5mg含まれています。亜鉛は人体に欠かせないミネラルで、成長促進、脱毛の抑制、傷の治癒を早める、味覚や嗅覚を正常化するなどの働きがあります。免疫力を高めるので、カゼなどの感染症予防の効果もあります。
また、黒砂糖は、カルシウムとマグネシウムをバランスよく含んでいます。
カルシウムは、骨を強化するのはもちろん、規則的な心臓の鼓動を維持する、唾液や胃液の分泌を促進する、精神を安定させるなどの効能があります。
ただ、カルシウムを過剰摂取すると、血管の壁に沈着し、動脈硬化を起こすリスクがあります。これを防いでくれるのがマグネシウムです。カルシウムとマグネシウムの両方が含まれる黒砂糖は、カルシウムを摂取するのに最適な食品なのです。
最後に、バナナと酢が組み合わされた際に生じる効能についてご説明しましょう。
酢の酢酸、クエン酸、リンゴ酸は、体内に入ると「クエン酸回路」を活性化します。クエン酸回路とは、栄養素を分解してエネルギーに変える働きですが、バナナ酢に含まれる有機酸が、このクエン酸回路を活発にします。バナナに含まれる糖類(ブドウ糖)も、クエン酸回路をより活発に働かせるでしょう。
そして、クエン酸回路が活発になれば、体内の脂肪分もエネルギー産生にどんどん使われるようになります。これによってもダイエット効果は上がってくるのです。
加えて、バナナの食物繊維は、食事で摂取した脂肪分を包み込み、そのまま体外に排出してくれます。そのため、小腸での余分な脂肪の吸収が抑えられます。バナナには、エネルギー代謝をスムーズにして、糖質をブドウ糖などに変えるアミラーゼも含まれています。これらも、ダイエットの助けとなります。
このように、バナナと酢は最強のコンビです。この二つの食品の力を存分に引き出すバナナ酢を、強くお勧めいたします。