【ぎっくり腰の応急処置】安静はNG 動かして"伸ばして治す"
ぎっくり腰とは、正式名称を急性腰痛症といいます。前屈をしたり、咳やくしゃみをしたりといったことが原因で、腰に激痛が走ったり、急激に脱力したりする症状が起こります。効果的な対処法として、「自重けん引」と「壁押しストレッチ」をご紹介します。【解説者】久野木順一(日本赤十字社医療センター整形外科センター長)
ぎっくり腰の原因は、骨や関節のずれ
腰痛の代表的なものとしては、慢性腰痛のほかに、何かのひょうしに起こるギックリ腰(急性腰痛症)があります。
荷物を持ち上げたり、落ちている物を拾おうとしたりしたときなど、前屈の姿勢を取ることがきっかけで起こります。
腰に激痛が走ったり、急激に脱力したりする症状です。
セキやクシャミなど、ささいなことで起こることもあります。
ギックリ腰になると、あまりに痛みが激しいので、腰が曲がったままになったり、歩くのに支障が出たりします。
それなのに、整形外科を受診しても「異常はありません」といわれ、「こんなに痛いのに異常なし?」と疑問に思うでしょう。
安静よりも「動かして治す」ストレッチが効果的
少し前までは、「ギックリ腰になったら、とにかく安静がいちばん」というのが一般的でした。
しかし、最近の研究では、安静にするよりも、体を動かしたほうが回復が早く、再発も防げることがわかってきました。
実際、私も外来にギックリ腰の患者さんが見えたときには、腰を伸ばす施術をします。
診察台の上にあおむけになり、自分の足の重みで腰周りの筋肉をストレッチするのです。
「自重けん引」と呼んでいます。
ストレッチをすることで、緊張して収縮していた筋肉がほぐれ、腰から骨盤にかけてのアライメントがよくなり、痛みが和らぐのです。
ほとんどの患者さんは、曲がっていた腰が伸び、痛みが緩和します。
このストレッチは、自宅でも机やテーブルなどを使って行うことができます。(下の図参照。)
このストレッチは、下肢全体の重さによって背骨と骨盤をゆっくりけん引します。
すると、腰周りの関節や筋肉が、正常な状態に戻ります。
つまり、アライメントを元どおりにできるのです。
腰の痛みが激しいときは、あおむけになったり、起き上がったりするのは難しいので、家族などに補助してもらってください。
サポートしてくれる人がいないときや、机やテーブルがないときには1人でできるストレッチもあります。
壁を押しながら腰を伸ばす「壁押しストレッチ」です。
外出先で腰が痛くなったときなどにも行うことができるので、知っておくと便利です。
ギックリ腰ほどはひどくないものの、腰が痛いというときにも、壁押しストレッチを行うと楽になります。
最後に注意点です。
腰だけでなく足にまで痛みやしびれがある場合や、どんな姿勢を取っても痛みが緩和しない場合は、自重けん引や壁押しストレッチを行わないでください。
椎骨の間にある椎間板がはみ出して神経を刺激する椎間板ヘルニアや、脊髄が通る脊柱管が狭くなって神経を圧迫する脊柱管狭窄症、椎骨の圧迫骨折など、セルフケアでは対応しきれない病気の可能性があります。
整形外科を受診し、医師の指示に従ってください。
自重牽引、壁押しストレッチのやり方
関連記事
筋肉がこわばると、体を支えている骨格のバランスがくずれて、ぎっくり腰を起こしやすくなります。ぎっくり腰に即効性があるのが、手の甲にある「腰腿点」(ようたいてん)という反射区を利用した「指組み」治療です。この「指組み」のやり方をご紹介します。【解説】内田輝和(鍼メディカルうちだ院長・倉敷芸術科学大学生命科学部教授)
更新: 2020-03-02 10:09:34
「なぜ太ももに?痛むのは腰なのに」と思ったのを覚えています。しかも関口先生は「そのまま歩いてください」と言います。イスに座るのですらつらかったのですが、我慢してなんとか歩きました。その後先生に促されて前屈をすると、なんと、まったく痛みません。帰り道も普通に歩けたのです。【体験談】郷一扇(演歌歌手・60歳)
更新: 2019-09-11 11:52:02
家での体操は毎晩やると決めて続けました。以前は、体を曲げると痛くてつらかったのが、徐々に楽に曲がるようになりました。すると、ギックリ腰が起こりにくくなり、なったとしても軽くすむようになりました。すべり症の痛みは再発していません。【体験談】山本陽子(仮名・主婦・70歳)
更新: 2019-09-10 22:10:00
K点とは、後頭部にある1点で、東北大学名誉教授である国分正一先生が発見した痛み解消の特効点です。K点を刺激したとたん、ぎっくり腰で救急車で運ばれてきた人が、その場で痛みが治まって自分で歩いて帰ったりといった例もあるのです。【解説】国分正一(国立病院機構仙台西多賀病院脊椎脊髄疾患研究センター長)
更新: 2019-09-10 22:10:00
ぎっくり腰(急性腰痛症)とは筋肉の痙攣が原因で激痛が起こる症状です。ギックリ腰は、いわば腸腰筋が「こむら返り」を起こしているようなものなのです。皆さんは、こむら返りの時、どう対処しますか?痛みに耐えながら痙攣した筋肉を伸ばそうとすると思います。ギックリ腰への対策も同じです。【解説】太田邦昭(太田整形外科院長)
更新: 2019-09-10 22:10:00
最新記事
私は鍼灸師で、日本で一般的に行われている鍼灸治療のほか、「手指鍼」を取り入れた治療を行っています。手指鍼はその名のとおり、手や指にあるツボを鍼などで刺激して、病気や不調を改善する治療法です。【解説】松岡佳余子(アジアンハンドセラピー協会理事・鍼灸師)
更新: 2020-04-27 10:34:12
腱鞘炎やバネ指は、手を使うことが多いかたなら、だれもが起こす可能性のある指の障害です。バネ指というのは、わかりやすくいえば、腱鞘炎がひどくなったものです。腱鞘炎も、バネ指も、主な原因は指の使いすぎです。痛みやしびれを改善する一つの方法として、「手首押し」をご紹介します。【解説】田村周(山口嘉川クリニック院長)
更新: 2020-03-23 10:16:45
筋肉がこわばると、体を支えている骨格のバランスがくずれて、ぎっくり腰を起こしやすくなります。ぎっくり腰に即効性があるのが、手の甲にある「腰腿点」(ようたいてん)という反射区を利用した「指組み」治療です。この「指組み」のやり方をご紹介します。【解説】内田輝和(鍼メディカルうちだ院長・倉敷芸術科学大学生命科学部教授)
更新: 2020-03-02 10:09:34
慢性的な首のこり、こわばり、痛みといった首の不調を感じたら、早めに、まずは自分でできる首のケアを行うことが大切です。【解説】勝野浩(ヒロ整形クリニック院長)
更新: 2020-02-25 10:06:07
首がこったとき、こっている部位をもんだり押したりしていませんか? 実は、そうするとかえってこりや痛みを悪化させてしまうことがあります。首は前後左右に倒したりひねったりできる、よく動く部位です。そして、よく動くからこそ、こりや痛みといったトラブルを招きやすいのです。【解説】浜田貫太郎(浜田整体院長)
更新: 2020-02-17 10:18:14
私たちの骨や関節は、体を動かしやすいように並んでいます。
この適正な並びのことを「アライメント」といいます。
ところが、何かの刺激が加わることで、椎間関節(背骨を構する椎骨をつなぐ関節)や仙腸関節(骨盤を構成する仙骨と腸骨をつなぐ骨)などが、レントゲンに写らないほどわずかにずれて、アライメント異常を起こします。(図参照。)
体がアライメント異常を察知すると、背骨を安定させる筋肉が一気に収縮し、動かなくなります。
これがギックリ腰です。