モヤシには体内の余分な熱を取り解毒する効果がある
めまいがある人の中には、病院で検査をしても異常がなく、治療薬の効果も感じられずに悩んでいるケースが、たいへん多く見受けられます。
しかし、あきらめることはありません。なかなか改善しないめまいでも、食事や漢方で十分に対処できます。
中国の伝統医学である中医学では、「気・血・水」を人間の生命活動を支える要素と考えています。気は一種の生命エネルギー、血は体内を巡る血液、水は血液以外の水分です。
この三つの流れが、体内をスムーズに循環していれば健康が保たれ、循環が滞ればさまざまな不調や病気が起こります。
めまいは気や血の滞りでも起こりますが、治りにくいめまいの多くは、水のよどみ(痰湿)が原因です。
水がよどんだ状態は、ドブに似ています。ドブにたまった水は濁り、腐敗して熱を発します。同じように水の巡りが悪くなると、よどみから熱が生まれ、不要物が体内にたまって内臓の働きが低下します。
水のよどみによるめまいは、頭がクラクラして立っていられない、頭がどんよりして考えがまとまらない、イライラする、吐き気がする、口臭・体臭が強いなどの症状が現れます。
また、舌に黄色い粘り気のあるこけが、べったりつくという特徴が見られます。
このタイプのめまいにお勧めなのが、ゆでモヤシです。モヤシは体内の余分な熱を取り、よどみがもたらす不要物の毒を解毒する作用があります。
ゆでモヤシを食べていると、頭がクラクラするめまい、吐き気、頭重感、口臭・体臭が改善します。
茹でモヤシの食べ方

予防なら週に1回、症状があれば3回食べる
ゆでモヤシの食べ方は簡単です。モヤシ2分の1パック(100g程度)を、スープやみそ汁の具にするか、さっとゆでて、酢やゴマ油をかけて食べます。
モヤシはゆでて温め、朝食べるのがポイントです。というのも熱を取る働きがあるモヤシを、体温が下がる夜に食べると、必要以上に体を冷やしてしまう恐れがあるからです。
めまいの予防が目的なら週に1回、症状がある場合は、毎日または週に3回以上、ゆでモヤシを食べましょう。
現代人が好むアイスクリームなど冷たい乳製品や鶏の唐揚げ、トンカツなど動物性の脂の食べ過ぎは、水のよどみの原因になります。ゆでモヤシを常食するとともに、これらの食品を控えることも大切です。
吐き気や頭重感も消失した!
ここでAさん(46歳・主婦)の例をご紹介しましょう。Aさんのめまいが始まったのは、3年前のこと。頭がクラクラして、時に吐き気を催し寝込むこともありました。
耳鼻咽喉科の検査で異常はなく、めまいを和らげる治療薬を処方されました。しかし薬の効果はなく、Aさんはめまいや吐き気、頭がぼんやり重く、考えごとができない、イライラなどの症状に悩まされ続けました。家族から口臭が強いと言われ、気分は落ち込むばかりでした。
私のところに相談にみえたときAさんは、「もう打つ手がありません」と、しょんぼりしていました。舌には薄黄色のこけがついており、水のよどみからくる典型的なめまいでした。
そこでAさんには、毎朝、ゆでモヤシを食べるようアドバイスしました。加えて、よどんだ水の排泄を促し、余計な熱を取り去る漢方の、茵五苓散を処方しました。すると3週間ほどでめまいの症状が軽くなり、3ヵ月後には、すべての症状が消失しました。
めまいの完治後、Aさんは漢方をやめ、めまいを予防するために、ゆでモヤシを週3日食べるようにしました。その後は再発もなく、Aさんはすっかり明るさを取り戻し、元気に暮らしています。
ゆでモヤシと茵五苓散を併用すると、めまいの改善効果が高まります。最初に挙げたようなめまいが起きたら、ゆでモヤシを食べしばらくようすを見て、症状があまり変わらないようなら、漢方薬を併用するといいでしょう。
モヤシは安価で、日本中どこでも手に入ります。めまいの症状がある人は、実践されることをお勧めします。
解説者のプロフィール

井上正文
1978年、明治薬科大学卒業。薬剤師。1984年、中国陜西省の張学文国医大師に師事し、現在に至る。漢方治療の臨床経験は30年以上。