毒を速やかに排出する家庭で作れる漢方薬
あずきの原産地は東アジアとされ、日本へは3世紀ごろ、中国から朝鮮半島を経て伝わったといわれています。
8世紀に書かれた『古事記』や『日本書紀』には、あずきについての記述がすでにあります。
宮中儀式や年中行事に使われるなど、日本では古くから親しまれてきた作物です。
かつては、その美しい赤色が呪術的意味を持ち、穢れを払ったり、魔除けをしたりする目的で使われてきました。
現在も、ハレの日の食べ物として、赤飯やあずきがゆを食べる習慣が残っています。
これは、「めでたい日に、災いが起こらないように」という意味があるのです。
縁起担ぎだけでなく、あずきには、私たちの体を健康に保つ重要な成分が豊富に含まれています。
漢方薬の材料としても、尿の出をよくしたいときや、炎症を抑えたいとき、毒を速やかに排出したいときなどに使われています。
あずきを配合した漢方薬「赤小豆湯」は、利尿効果が高いことで知られています。
心臓病や腎臓病、脚気(ビタミンB1の欠乏によって心不全と末梢神経障害を来す病気)など、むくみが生じる病気全般に、昔からよく使われているのです。
そして、赤小豆湯の簡易版として、家庭で飲むのにお勧めしたいのが、「あずきスープ」です。
あずきの薬効を、効率的にとることができます。
30gのあずきを600mlの水で煮て、煮汁が半分くらいになったら出来上がりです。
これを1日分として、2〜3回に分けて飲みます。
体内の余分な水分や老廃物を速やかに排出するので、むくみを取り、ダイエットにも役立ちます。
下半身太りに著効!視力向上にも有効!
では、あずきの健康効果について、まずは東洋医学の立場から説明しましょう。
東洋医学では、あずきは「腎を補う」食材とされています。
腎とは、西洋医学における腎臓だけではなく、老化や成長、生命力をつかさどる働き全般を指します。
つまり、腎を補うということは、生命力を増して老化を遅らせる「アンチエイジング」を意味するのです。
健康の維持や増進はもちろん、全身の若返りを後押ししてくれるので、白髪や薄毛、シミやシワ、性力減退など、老化現象の予防・改善が期待できます。
次に、現代栄養学の立場から、あずきを見てみましょう。
あずきの利尿作用は、カリウムの働きと考えられます。
カリウムは、ナトリウムを体外に排出したり、尿の出をよくしたりします。
体のむくみを取る効果に優れ、ダイエットにも大いに役立つのです。
日本人女性には、水分の代謝が悪い、いわゆる「水太り体質」の人が多く見られます。
体内に余分な水分が滞留していると、エネルギーをうまく消費できず、やせにくく太りやすい体質になります。
あずきのカリウムは、余分な水分を排出してむくみを解消します。
体内の水分代謝が高まるので、それに伴い脂肪の代謝も向上します。全身がスッキリして、太りにくい体質になるでしょう。
あずきに豊富に含まれるビタミンB1も、ダイエットに役立ちます。
ビタミンB1は、糖質や脂肪を分解し、エネルギーに変える栄養素で、皮下脂肪の蓄積を防ぎます。
体の冷えを取り、水分代謝がよくなります。
特に下半身太りの人は、効果を実感しやすいでしょう。
さらに、ビタミンB1には、腎臓や心臓の働きを助けて、筋肉と神経の疲労を軽減させる働きもあります。
加えて、あずきは食物繊維の宝庫です。あずきスープには、水溶性食物繊維がたくさん溶け出しています。
水溶性食物繊維は、腸内でゼリー状になり、便をやわらかくして出しやすくします。
その結果、便秘が改善して、おなかが凹んだり、体重が減ったりするでしょう。
最近の研究では、あずきの外皮に含まれるサポニンに、強い抗酸化作用のあることが判明しました。
えぐみや渋みの成分であるサポニンには、老化の元凶物質である過酸化脂質の生成を抑え、肝機能障害を防ぎ、コレステロールや中性脂肪を減少させる作用があります。
そのため、肝臓障害や動脈硬化、高血圧の改善にも有効です。
また、あずきの外皮の赤い色素は、アントシアニンです。
アントシアニンは、ブルーベリーや赤ジソなどに含まれる青紫色の色素で、眼精疲労や視力向上に役立つことで知られています。
水溶性ビタミンの一種であるナイアシンも含まれています。
ナイアシンは、糖質、脂質、たんぱく質の代謝に不可欠な栄養素です。血行を促進し、代謝を高めるので、やはりダイエットの一助となるのです。
以上のことから、あずきスープを毎日飲むと、東洋医学的には若返り効果が期待でき、現代栄養学的には便秘やむくみが消えて、「やせ体質」になるといえます。
あずきは、体力のある実証タイプの人にも、体力のない虚証タイプの人にも適した食材です。
スープにすることで、ますます消化器に負担をかけずに、薬効を摂取できます。
煮出したあとのあずきは、無理に食べなくてけっこうです。
スープに、有効成分が十分溶け出しているからです。
とはいえ、不溶性食物繊維など、栄養素は残っているので、食欲のある人は、煮物や炒め物、汁物などに混ぜて食べてください。