解説者のプロフィール
サッカー日本代表選手がその場で違いを実感!
「ひもトレ」とは、1本のひもを体に巻いて引き出された反応や機能を使うことで、体のバランスを整え、運動感覚を養うトレーニング法です。
私がひもトレを考案したきっかけは、偶然でした。
ある日、自分の体の動きを観察していると、ふと、自分の体の左右差に気づきました。
そして、その場に落ちていたビニールひもを拾って、手首にかけて体を動かしてみたのです。
すると、ひもをかけたときのほうが、快適に動かせることに気づきました。
そうするうちに、体の左右差も消えていったのです。
こうした感覚は、体のバランスの偏りから生まれます。
例えば、ペンで文字を書くときに力を入れすぎると、書くことはできても、集中力が持続しなかったり、肩や首がこったります。
逆に力を抜きすぎると、目的である書くことが成り立ちません。
体のバランスとは、そういう関係で成り立っています。
ちょうどそのころ、サッカーの日本代表選手や、女子サッカーリーグの選手たちに指導をしていたので、ひもトレを試してもらいました。
すると、ひもを手首にかけて腕を上げ下げするだけで、大きな違いを感じてくれたのです。
ひもトレは、アスリートだけにお勧めのものではありません。
一般のかたたちにも好適です。
ひもトレを実践したかたからは、「肩こりが楽になった」「階段をスイスイ上り下りできる」「ひざ痛がよくなった」といった声があがっています。
最近では、特別支援学校や介護施設でも利用され始め、ひもトレが生活の質を上げることもわかってきました。
体のクセが取れてコリや痛みが改善!
では、なぜひもトレで、こうした効果が出るのでしょうか。
例えば、ひもをおなか周りに緩く巻くと、全身の連動性がひもによって生まれます。
その結果、体の無駄な緊張や余計な脱力が改善し、本来の機能が働き出すと考えられます。
これが、冒頭の楽に体を動かす感覚をもたらすのです。
ひもトレには、クセを改善する効果もあります。
例えば、両手首や両足首に、ピンと張った輪状のひもを巻いた場合、緊張しやすい人は適度に力が抜け、脱力しやすい人は必要な力が入ります。
つまり、巻いたひもが、体をニュートラルな状態に保ち、体のクセを取り、より自然な動作ができるようになるのです。
私たちは、知らず知らずのうちに、体の使い方にクセがついてしまうものです。
例えば、ひざにケガをすると、無意識のうちにひざをかばうようになります。
問題は、痛みがなくなったあとも、ひざをかばうクセが残り、体に負荷がかかることです。
それが、新たなひざ痛や、負担が増したほかの部位の痛みとなって出てくるのです。
ひもトレには、クセを取って、無自覚な体に、正しいバランスを思い出させる効果があります。
体にかかっていた余計な負荷がなくなることで、結果的に体のコリが取れたり、腰痛やひざ痛をはじめとする関節痛を改善したりする効果が生まれるのです。
おなかに巻いて寝れば不眠や腰痛が改善

では、ひもトレで使用するひもについて解説しましょう。
用意するひもは、100円ショップや手芸店で売られているひもで十分です。
スカーフやストール、着物の腰ひも、梱包用のロープなどでもかまいません。
ただし、ゴムや革などの伸びる素材や、逆に全く伸縮性のない素材は、かえって疲労を生みますので、ご注意ください。
ひもの太さは、あまり細すぎず、太すぎず、4〜8mm程度が目安です。
ひもの長さは、1・5mほどで、大柄なかたは、1・8m程度の物を用意するといいでしょう。
実際に使うひもの長さは、ひもを巻く箇所や用途によって、自分の動きやすさを基準に、そのつど調節します。
ひもトレには、さまざまなひもの巻き方がありますが、ここでは、代表的なひもトレの方法を4つご紹介しましょう。
「ひもトレ」の基本のやり方
手首に巻く

①手首に巻く
自然に立った状態で、あらかじめ輪を作ったひもを両手首にかけます。
次に、両手の間隔を肩幅程度にし、ひもがピンと張るように長さを調節します。
そして、ひもが張った状態のまま、両腕を頭上にゆっくりと上げましょう。
できるだけ腕を上げたら、ゆっくりと下ろします。これを5回くり返します。
腕が上がりにくいかたや、肩に痛みがあるかたは、ぜひお試しください。
ただし、運動中に痛みが増すようでしたら、中断しましょう。
次に、両腕を肩の高さまで上げ、ひもはピンと張ったまま、上半身を左右にゆっくりひねります。
肩に負担がかかるかたは、ひじを曲げて行ってもかまいません。
これも左右5回ずつが目安です。
さらに、両腕を頭上に上げて、ひもはピンと張ったまま上半身をゆっくりと左右に倒します。
これも、左右5回ずつ行いましょう。
体の左右差が消え、首や肩のコリがほぐれます。
たすきがけで姿勢がよくなり、1日巻いて過ごせば、活動量や仕事量が変わってくる

②たすきがけ
大きめの輪を作るようにひもを結びます。
次に、ひもを8の字にして、両腕をそれぞれ左右の輪に通します。
そして、ひもを首の後ろに回せば完成。あとは、体に添わせるようにひもの長さを調整しましょう。
ひもは、きつく締めすぎないよう、緩めにしてください。
姿勢がよくなり、1日巻いて過ごせば、ふだんと比べて活動量や仕事量が変わってくるのも実感できるでしょう。
10〜30分巻くだけでも効果的です。
おなかに巻くことで、全身のつながりが生まれる

③おなかに巻く
おなか周りにひもを添わせて、きつくならない程度に緩く結びます。
おへその辺りにあればOKです。
おなかに巻くことで、全身のつながりが生まれます。
巻いたまま一日を過ごしてみてください。
こちらも10〜30分巻くだけでも、変化を感じることができます。
就寝中に巻いておくのもお勧めです。
寝返りしやすくなるため、良質な睡眠の手助けになります
腰痛の改善や予防にも役立つでしょう。
お尻に巻くと、階段の上り下りが格段に楽に

④お尻に巻く
まず、両足を軽く開いた状態で、ひもをお尻の下に合わせます。
太ももの前面でひもを結んだら、太もも前面のひもを鼠径部まで引き上げ、ずり落ちない程度に長さを調節しましょう。
お尻に巻くと、階段の上り下りが格段に楽になります。
巻いたままウォーキングやジョギングなどをすると、足が軽くなり、走りやすくなります。
誰でも始められる「ひもトレ」
ひもトレは、誰でも簡単に始められます。
変化は人それぞれですが、まずは快適な日常のお手伝いはできるはずです。
論より証拠。まずはお試しください。
小関勲
1973年生まれ、山形県出身。小関アスリートバランス研究所代表。1999年から始めた「ボディバランスボード」の製作・販売をきっかけに、多くのオリンピック選手やプロスポーツ選手に指導を開始。現在は、多くのトップアスリートたちから厚い信頼を得るとともに、日本全国で指導、講演、講習会活動を行っている。6月には最新刊『ヒモ一本のカラダ革命 健康体を手に入れるヒモトレ』(日貿出版社)を上梓する。
●小関アスリートバランス研究所
https://www.kablabo.com/