食生活の欧米化でにおいに悩む人が増加中
梅干しは、その強力な抗菌作用により、昔から万能薬として扱われてきました。
多くの健康効果のなかでも、私が特に注目しているのが、消臭作用です。
私は、体臭・多汗を専門に治療しています。
来院される患者さんに、におい対策食として勧めているのが、梅干しを緑茶に入れた「梅干し茶」です。
なぜ、梅干し茶がにおい消しに効果があるのでしょうか。
その前に、体臭が発生するしくみについてお話ししましょう。
体臭のきつさが、食べた物に由来することをご存じでしょうか。
例えば、一般に欧米人は日本人よりも体臭がありますが、その理由の一つは、食生活の違いです。
欧米の食卓では、肉・卵・乳製品・小麦製品などが中心。
これらの食品は、いずれも酸性に分類されます。
酸性食品ばかり食べていると、体内の血液が、酸性傾向になりがちです。
通常、健康な人の血液は、pH7.36〜7.44の弱アルカリ性に保たれているので、血液が酸性になることは、実際はありません。
しかし、弱アルカリ性の状態が、わずかにバランスをくずし酸性に傾きかけると、体の抵抗力が落ち、病気や老化の原因物質である活性酸素が生じやすくなります。
すると、体内の皮脂腺などで酸化反応が進み、その過程で、におい物質が作り出されます。
こうしたわけで、酸性食品ばかり食べていると、体臭が強くなるのです。
実際に日本でも、食生活の欧米化に伴い、体臭が気にされるようになってきました。
もともとのワキガ体質がより顕著になる人や、加齢臭などに悩む人が増加しています。
体臭予防には、血液をよりアルカリ傾向に保つことがポイントです。
そこでお勧めなのが、アルカリ性食品の代表である、梅干しなのです。
梅干しは、その酸っぱさから酸性と誤解されがちですが、豊富に含まれるミネラル類の働きで、血液をアルカリ性へと傾けてくれます。
加えて、梅干しは、汗のにおいにも効果を発揮します。
疲労物質である乳酸が体内にたまると、汗の成分中にアンモニアが増加し、においが強くなります。
梅干しに豊富に含まれるクエン酸は乳酸の産生抑制や分解促進を助けるので、体の疲れを取るのと同時に、汗のにおいもおさえてくれるのです。
また、サラサラした汗は成分のほとんどが水分で、においの少ない、よい汗といえます。
こうしたよい汗の産生に、欠かせないのがカルシウム。
梅干しは、腸管からのカルシウムの吸収率を著しく増加させるので、においの少ない汗づくりにも役立つというわけです。
有機酸と唾液のダブル効果で口臭撃退!
このように梅干しは、体臭を予防し、汗のにおいもおさえますが、それだけではありません。
口臭の改善にも効果があります。
梅干しに含まれる、クエン酸を代表とした有機酸には、コレラ菌にも打ち勝つほどの強力な抗菌作用があります。
また、梅干しを食べると、ご存じのとおり、唾液の分泌が促されます。
唾液にも、優れた抗菌作用が認められています。
つまり、有機酸と唾液のダブル効果で、口臭を撃退できるというわけです。
この、全身のにおい対策に強力な効果を発揮する梅干しを、さらにパワーアップさせるのが、緑茶です。
緑茶には、カテキン類、フラボノイド類といったポリフェノールが豊富に含まれています。
これらは、におい物質と化学反応を起こして中和したり、活性炭のような微細構造でにおい物質を吸着したり、においのもとになる雑菌の繁殖をおさえたりします。
緑茶もまた、梅干しに負けないほど防臭・消臭効果があるのです。
患者さんのなかには、朝のコーヒーを緑茶に替えただけでも、奥さんから「におわなくなった」といわれた人や、緑茶をたくさん飲んだら尿のにおいが軽減したという人もいます。
ちなみに、緑茶のカテキンは、二煎め、三煎めのほうが多く抽出されます。
渋いお茶はそれだけ消臭力が高いと思って、喜んで飲みましょう。
梅干しと緑茶の組み合わせは、そうしたわけで、におい対策の最強タッグです。
しょっぱいのが苦手な人も、「梅干し茶」にすれば、梅干しの塩気が薄まり、とりやすくなります。
もちろん、梅干しをお茶請けにしていっしょに食べても、効果に変わりありません。
においが気になる人は、ぜひ梅干し茶を毎日の生活に取り入れてみてください。