解説者のプロフィール
スキンケアに熱心な人ほど重症の乾燥肌
私は15年ほど前から、基礎化粧品をいっさい使わず、水で顔を洗うだけの「宇津木流スキンケア」を提唱しています。その効果は多くの患者さんたちの肌で実証済みです。肌本来の保湿機能がよみがえり、キメ細かな美しい肌に変わります。
しかし、「洗った後に何もつけないと、肌がつっぱるのでは?」と疑問を持たれるかたも多いでしょう。実は、キメが整った健康な肌は、何もつけなくてもつっぱることはありません。つっぱるのは肌のバリア機能が壊れて、キメがなくなり、極度の乾燥肌になっているからなのです。
バリア機能とは、肌から水分が蒸発するのを防ぎ、外部の異物や化学物質が入り込むのを防ぐ働きのことです。バリア機能が働かないのは、化粧品に含まれる油や界面活性剤による刺激によって、肌を傷めてしまっているケースが多いことがわかっています。化粧品をつけることで肌がつっぱり、その結果、化粧水やクリームで肌の乾燥をごまかさざるを得ないという悪循環が起こっているのです。
私は以前、北里研究所病院で、皮膚の状態を詳しく検査する美容ドックを行っていました。そのとき患者さんの肌をマイクロスコープ(顕微鏡)で診察したところ、8割以上のかたが重症の乾燥肌で、毛穴が赤くなっていることに驚きました。美容ドックへ来るのは、スキンケアへの意識が高い人たちばかりでしたが、熱心にスキンケアに励んでいる人ほど、化粧品の使い過ぎで肌が乾燥していたのです。
水洗顔に変えたら肌のキメが再生
そこで患者さんには、1カ月間、化粧品を使うことを禁止し、洗顔も水だけにしていただきました。すると、1カ月後には、肌のキメが再生し、乾燥や洗顔後のつっぱりがなくなっていたのです。
ただし、乾燥がなくなったからといって、また化粧品を使い始めると、バリア機能が壊れ、乾燥が再発します。水洗顔だけを続けることが、肌荒れを改善し、美肌をキープするための最善の方法なのです。
さらに、化粧品をやめても、ヘアカラーを使用していることで、肌荒れが改善しないケースがあります。頭皮と顔の肌は続いているので、ヘアカラーをやめるか、刺激の少ないものを選ぶようにしましょう。
私が推奨する水洗顔は、水が理想的ですが、または気温よりも3〜4℃高い「ぬるま水」で行います。両手で水をすくい、その中に顔を入れて指の腹を使って産毛をなでるように、またアカがたまらない程度にこすって洗います。
熱いお湯での洗顔は、肌の脂を落として、バリア機能を壊してしまうので避けてください。
ワセリンの上手な使い方

化粧品断ちを始めた頃は、まだバリア機能が回復していないため、ひどく乾燥してしまう人もいます。
そのため、次の3つの条件にあてはまる人は、症状のあるところに少量のワセリンをつけても構いません。
①肌が軽い炎症を起こして、かゆみやチクチク痛みを感じる部分
ワセリンでコーティングすることで、外部の刺激から肌を守り、傷が治りやすくなります。
②ひどく乾燥して粉をふいている部分
ワセリンが、めくれた角質細胞(表皮の細胞)を皮膚にはりつけ、肌を乾燥から守ります。
③肌が硬くなってガリガリしている部分
乾燥して角質が厚くなっている状態から、ワセリンが肌をやわらかくします。
また、例外として小ジワが気になる冬の目元の乾燥や、唇のガサガサにもワセリンは使って大丈夫です。
ワセリンは、酸化しにくく、皮膚にしみこみにくいので、肌にやさしい保湿剤です。ドラッグストアなどで気軽に購入でき、価格も手頃です。
とはいえ、ワセリンをつけすぎると、かえって乾燥するので、米粒の半分くらいの量を両手でよく伸ばしてから、必要な部分にのみつけてください。「ワセリンがベタベタする」という人は明らかにつけすぎです。
また、ワセリン自体を清潔に保つため、手でとらず、必ず清潔な綿棒か楊枝で取るようにしましょう。
ワセリンの落とし方ですが、酸化しづらいので、つけたままでも肌に害はなく、石けんで落とす必要はありません。水洗顔をしていればじゅうぶんです。
自分の肌がワセリンを必要としているかどうかわからない場合は、鏡を乾燥している部分に押し当ててみてください。そのときに鏡に脂がついて白くなるなら、ワセリンをつける必要はありません。
「宇津木流スキンケア」は何歳から始めても成果が表れます。究極のシンプルなケアで、肌が本来持つ「再生力」を引き出す方法です。ぜひお試しください。
「ワセリンの使い方」のポイント

①少量を綿棒でとる(米粒の半分ぐらい)
②両方の手のひらで伸ばす
③必要な部分にのみ、手のひらを押しつけながらつける
●注意点
※べたべたするのはつけすぎ。肌をかえって乾燥させる
※ワセリンは石けんで落とす必要はない。水洗顔でじゅうぶん
うつぎりゅういち
北里大学医学部卒業。1999年、日本で最初のアンチエイジング専門施設・北里研究所病院美容医学センターを創設、センター長を務める。日本では数少ないアンチエイジング治療専門の美容形成外科医。現在はクリニック宇津木流にて院長を務め、シミ・シワ・たるみなど老化の予防と治療に従事している。著書は『肌の悩みがすべて消えるたった1つの方法』(青春出版社)など。