長年の薬をやめられた!正座をしても大丈夫!
私がひざを痛めたのは、66歳のときでした。登山中、ぬかるみに足を取られて、左ひざをひねってしまったのです。
病院では、変形性ひざ関節症と診断され、「手術しないと治らない」といわれました。手術は避けたかったのですが、別の病院でも同じ診断結果でした。
けっきょく私は、手術はせず、市販の鎮痛剤で痛みをごまかすようになりました。しかし、正座をすると激痛が走るため、完全にイス生活です。つえに頼って歩くのがやっとでした。
歩くたびに痛むのは、ひざだけではありません。外反母趾もあったため、足指のつけ根に焼けつくような痛みを感じます。
加えて、便秘も悩みの種でした。私はかつて、小学校の教師をしていました。授業中に席を外すわけにはいかないため、トイレを我慢するのが癖になってしまったのです。1週間や10日もお通じがつかないのは、あたりまえ。退職してからも、こうした便秘は続いていました。
そんな状態だった私に、転機が訪れました。今から9年ほど前、70代の終わりのことです。
大学時代の同窓会に出席したところ、サポーターを巻いた私のひざを見て、友人が、「いい先生がいる」と紹介してくれたのです。それが、岡本啓司先生でした。
岡本先生の治療院では、「プライマリーウォーキング」という、かかとに体重をかけることを重視した歩き方を指導しています。先生の教えに納得した私は、早速、自宅でも練習を始めました。ポイントを紙に書き出して壁に貼り、それを唱えながら、かかとに体重をかけつつ、室内を歩くのです。
続けるうちに、みるみる変化が現れました。半年もすると、ひざの痛みがほとんど出なくなり、長年服用していた鎮痛剤をやめることができたのです。正座をしても、もう大丈夫。つえなしでも歩くことができます。
その数年後には、友人と、念願のスイス旅行を実現。現地で1日かけて山歩きしても、痛みはありませんでした。スイスのすばらしい景色に、そして、ひざの回復ぶりに感激したことはいうまでもありません。
姿勢がよくなった!背が高くなった!
岡本先生のところへ通い続けるうちに、「かかとに体重をかける意識づけの一環」として教えていただいたのが、「かかと体重」の練習です。
かかとでトントンと足踏みをすると、その刺激が、体中に伝わるのがわかります。私はかねてから、左ひざの上辺りの筋肉が弱いと、先生に指摘されていました。しかし、練習をくり返すうちに、ここの筋肉がしっかりしてきたようです。
先日は道で、後ろから歩いてきた知人に、「姿勢がよくなりましたね!」と声をかけられました。息子からも「背が高くなったね」といわれます。
つらかった外反母趾も、いつしか変形が改善され、痛みが出なくなりました。
また、立ち方や歩き方が変わったことが、内臓にもいい影響を与えたのか、便秘まですっかり解消。きちんとお通じがつくようになり、今日などは2回もありました。
高齢になるとひどい便秘になる人が多いと聞きますが、私の場合は、その逆で、この年になってようやく便秘が治ったのです。
同年代の友人は皆、やれ腰が痛いだの、背中が痛いだのと悩んでいます。ところが、私は90歳も間近になりますが、9年前にひざ痛を克服して以来、どこも痛くありません。独り暮らしをしており、身の回りのことは、すべて自分でできます。ほんとうに、ありがたいことです。
そういえば数年前、駅の階段でうっかりして、また左ひざを痛めたことがありました。その際にレントゲンを撮った医師が、「これほど状態の悪いひざで、よく普通に歩いていますね」と、半ばあきれたように、感心していたものです。
この言葉を聞いた私は、「ひざ関節が変形していても不自由なく歩けているのは、かかとに体重をかけるという基本を、きちんと実践できているからだ」と確信しました。実際にそのときも、痛みはひと月ほどで治まり、また元どおり歩けるようになったのです。
もちろん今でも、かかとで足踏みをしてから、1日に1時間は歩くようにしています。今後も続け、できる限り健康を維持していきたいと思います。
ひざを上げた歩き方はひざへの負担が大きい(プライマリーウォーキング指導者協会会長 岡本啓司)
当初お会いした際の菊池さんは、ひざを上げて歩いていました。こうした歩行は、つま先に体重がかかり、体に痛みやゆがみが生じます。ひざへの負担も大きいため、これが、症状がなかなか治らない原因でした。
ひざ痛が治ってからも、10年近く通っていただくうちに、見違えるほど姿勢がよくなりました。これからも、元気な高齢者のお手本でいらしてください。
かかとに体重をかけてトントンと足踏み!