解説者のプロフィール
ほとんどの人はつま先に体重がかかっている!
私の出身校は、野球の強豪校である横浜高等学校と駒澤大学です。野球選手として、体の痛みやゆがみはなぜ起こるのか、どうしたら治るのかといったメカニズムに強い関心を抱き、大学卒業後は、すぐに治療家の道に入りました。
そんな私が、多くの治療実績をもとに研究を重ねて得た結論は「痛みがある人は、物理的・骨格的に誤った体の使い方や立ち方、歩き方をしている。そのため体にゆがみが発生し、血管やリンパ管が圧迫される。結果、その人の最も弱い部位に痛みを発症する」というものです。
人の骨格の作りからすると、かかとに体重がかかるのが、最も自然で素直な立ち方です。ところがほとんどの人は、つま先に体重がかかっています。
また、巷では間違った歩き方の指導がまかり通っています。小学校では運動会の練習で、ひざを高く上げて歩く「行進歩行」を教えています。
こうした誤った歩き方の癖がついてしまっては、後々、体の故障を招きます。そうなる前に正しい体の使い方や立ち方、歩き方を知ってほしいのです。
そこで私が開発したのが、「プライマリーウォーキングⓇ」です。
プライマリーは、「最初の」「基本的な」「原始的な」という意味で、「赤ちゃんの初期歩行」と訳されます。「筋力の弱い赤ちゃんは、いかにして立ち上がり、歩くのか」といった点に着目した、より少ない筋力で効率的に歩く方法です。
この歩き方を、それこそ小学校の義務教育課程に取り入れてもらうのを目標に、日々、普及活動に努めています。
頭痛や首・肩の痛みネコ背やO脚も改善!
試しに、つま先に体重をかけた状態で立ってみてください。そのままでは安定せず前のめりになるのがわかると思います。すると体は、倒れないようバランスを取るため、逆に反るなどして、どこかに力が入ります。
どこに無理をさせるかは、人によって異なります。ある人は腰、ある人は股関節かもしれません。常にこの状態で歩くようになると、無理をさせている部位に、ゆがみが生じます。
負担がかかる部位は緊張を強いられるため、血管やリンパ管は圧迫されて、流れが悪化。循環が滞って、組織破壊や痛みが生じるというわけです。痛みは、体重のかけ方を直さない限り、根本的には治りません。
「かかと体重Ⓡ」はプライマリーウォーキングの基本です。私の講座では、かかとに体重をかけることの重要性を説明し、意識づけするための練習を皆さんに行ってもらいます。やり方は、図のとおりです。
「かかと体重」のやり方

準備姿勢として、左右のかかとをつけた状態で、つま先を約60度に開きます。なぜ60度かというと、股関節から足にかけてが、その角度でついているから。これが最も自然なのです。
この状態で体重をかかとにかけ、足を肩幅に開きひざを伸ばしたまま、その場でトントンと足踏みしましょう。かかと体重を体で覚えることができます。
足踏みを終えたら、かかとに体重をかけたまま、つま先をそっと床につけます。かかととつま先を同時に着地させる感じで歩くよう、助言しています。
姿勢がよくなり、ネコ背やO脚・X脚も矯正された例も
実際のプライマリーウォーキングでは、ほかにも、頭や首、肩関節を正しい位置にセットするなどの注意点があります。しかし、まずはかかとに体重をかけることを意識し、つま先体重の習慣を変えてみましょう。
体によけいな力をかけずに歩けるようになると、血管やリンパ管の圧迫が取れ、流れがよくなります。腰痛やひざ痛、股関節痛、頭痛や首・肩の痛みなどの改善に、大変効果的です。
姿勢がよくなるので、ネコ背やO脚・X脚も矯正された例もあります。
また、むくみも取れるため、病院では、乳ガンで手術をされた患者さんのケアに取り入れられています。下肢静脈瘤(足の静脈にできるコブ)の治療にも役立つと、医師とともに研究を進めているところです。
かかと体重は、痛みやゆがみのない健康体への第一歩。ぜひ実践してみてください。
岡本啓司
㈳プライマリーウォーキング指導者協会会長。岡本流身体調整研究所代表。鍼灸師・整体師。長年の治療経験をもとに、プライマリーウォーキング®を創案・提唱。普及に力を注ぐ。『プライマリーウォーキングで歩けば若返る!』(三笠書房)など著書多数。