解説者のプロフィール
短期間で非常によく効果が現れるスープ
私の鍼灸院では、鍼治療のほかに、患者さん自身にやっていただく養生法も指導しています。
特に、現代は食べすぎが原因で病気になっている人が少なくありません。
そのような人たちには、少食にすることや、古くから伝わる、食養生のやり方などをお伝えしています。
このような治療法の根底にあるのは、私自身の体験です。
私は21歳のとき、「脊髄小脳変性症」と診断されました。
運動機能を支配する小脳が萎縮していく難病です。
確立した治療法がなく、私は余命5〜10年といわれました。
しだいにふらつきや転倒が多くなり、日に日に歩けなくなっていきました。
ところが、断食および少食療法の先駆的な指導者であった故・甲田光雄医師のもとで、断食や生菜食をはじめとする養生法をくり返すうちに、私の症状は徐々に回復していったのです。
そして、体調に合わせて食事量を調整した結果、ついに私は1日に青汁1杯(150㎖)の生活をするようになりました。
こうした食生活を20年以上続けていますが、体調はとてもよく、病気の面影は全くありません。
人それぞれ自分に合った養生法を行うことが大事
体は軽くて動きやすく、どんどん健康な本来の自分になっていくようです。
睡眠は3〜4時間でじゅうぶん。疲れにくく、精神面でも不安や恐れ、怒りがなくなりました。
もちろん1日に青汁1杯というのは、私の体にはそれがちょうどいいということで、人それぞれ自分に合った養生法を行う必要があります。
ただ、食べすぎている人が多い現代、食養生が、さまざまな症状の改善に役立つと、日々の治療でも実感しています。
今回は、私が患者さんに指導している食養生の一つ、高血圧・高コレステロール血症に効く「シイタケ大根スープ」を紹介しましょう。
シイタケ大根スープは短期間で非常によく効果が現れるので、少食や生菜食が実践しにくい人にもお勧めです。
シイタケ大根スープの作り方
作り方は、輪切りにした大根と干しシイタケを、分量の水が半量になるまで煮つめて、しょうゆで味つけするだけです(左の写真参照)。
出来上がったスープは、1日500㎖を目安に、何回かに分けて少しずつ飲みます。
毎日血圧を測定し、基準値内に下がったらスープをやめます(基準値は、最大血圧が140㎜Hg未満、最小血圧が90㎜Hg未満)。
個人差はありますが、だいたい3〜7日ぐらいで効果が現れます。

特に降圧剤を飲んでいる人は、血圧の下がりすぎに注意してください。
シイタケ大根スープをやめて再び血圧が上がってきたら、また3〜7日間スープを飲みます。
これを2〜3ヵ月おきに、くり返すとよいでしょう。
シイタケ大根スープは、安全かつ根本的な治療法
シイタケは、脂肪分解パワーが強力です。
エリタデニンという成分が血液中のコレステロールを分解することで、血流をよくして、血圧を下げてくれるのです。
その降圧効果は、シイタケの戻し汁を使ったラットの実験でも確認されています。
一方、大根には、消化を助け、排尿を促し、過剰なたんぱく質を分解する作用があります。
そのほか、皮の部分に多く含まれるビタミンPが毛細血管を強化して、高血圧の改善に役立ちます。
そもそも血圧が高くなるのは、血管に脂肪がたまって内壁が狭くなり、強い圧をかけなければ脳細胞の隅々まで血液が届かなくなるからです。
にもかかわらず、薬で無理やり血圧を下げると、今度は脳に血液が行き渡らなくなる危険があります。
シイタケ大根スープは、血管をキレイにすることで血圧を自然に下げるので、安全かつ根本的な治療法といえます。
血圧が下がり頭痛やふらつきも解消した
脳卒中で半身マヒになった60代の女性は、降圧剤を飲んでも点滴を受けても最大血圧が200㎜Hgぐらいあり、頭痛やふらつきを訴えて私のところへ来られました。
そこでシイタケ大根スープを勧めたら、3日で120㎜Hgまで下がり、頭痛やふらつきもなくなりました。
シイタケ大根スープを飲んでいる間は、動物性の食品は控えてください。
肉や魚、煮干しでとったダシ、卵やバターを使ったお菓子類などです。
動物性の食品をとると、シイタケ大根スープの効きが悪くなるといわれています。
この間は、ご飯と、野菜や豆類中心のおかずを食べるようにしましょう。
なお、シイタケ大根スープにはたんぱく質を分解する働きがあるので、たんぱく質が必要な妊娠初期や、心臓の悪い人は、飲むのを控えてください。
高血圧で心臓にもトラブルがある人は、コップ1杯のお湯に干しシイタケ1個を入れ、1晩漬けておいたもので代用します。
これは毎日飲んでもかまいません。動物性の食品といっしょにとっても大丈夫です。
森美智代
森鍼灸院院長