ダイエット効果があるかは疑問
「砂糖は太る。だから、カロリーゼロの飲み物や菓子をとっています」という人も多いことでしょう。
しかし、その考えは正しくありません。
というのは、そうした食品には「人工甘味料」が使われているからです。
実は、「人工甘味料のほうが太る」という研究結果が、アメリカで、相次いで発表されています。
2008年、アメリカ・インディアナ州にあるバデュー大学で行われた、人工甘味料の動物実験です。
人工甘味料(サッカリン)入りのヨーグルトを、2週間与えたラットは、砂糖入りのヨーグルトを与えたラットに比べ、体重が増加しました。
しかも実験終了後も、体重はふえ続けたという報告が出されました。
もう一つは2009年、テキサス大学の研究チームによる大規模な疫学調査です。
人工甘味料入りの飲料(ダイエット・ソーダ)について、65〜74歳の男女を10年にわたって調べました。
その結果、人工甘味料入りの飲料をとる人たちは、全くとらない人たちより、ウエストのサイズが、平均で70%以上も増加したのです。
また、糖尿病を発症する可能性も高まった、と発表しています。
こうした実験結果や調査結果をみると、ノン(低)カロリーをうたっている人工甘味料に、果たしてダイエットの効果はあるのか、はなはだ疑問です。
そもそも、人工甘味料とは、いったい何でしょう。
人工甘味料は、天然には存在しない甘み成分を、人工的に合成して作られたものです。
日本では、アスパルテーム、アセスルファムK、ネオテーム、スクラロース、サッカリンが認可されています。
次に、人工甘味料の成分についてです。
甘さは、砂糖の数百倍もありますが、基本的に栄養価はありません。
糖質もカロリーもゼロ。それなのに、なぜ太ってしまうのでしょう。
インスリンの過剰分泌で膵臓が疲弊
まず、最初にお話ししたいのは、肥満の原因になる物質は、主に「糖質」ということです。
糖質をとると、血糖値が上がります。
すると、膵すい臓ぞうはインスリンというホルモンを分泌し、その働きで臓器は、糖を細胞に取り込みます。
次に、インスリンには、脂肪の分解を抑制したり、余った糖を脂肪に変えたりして、脂肪細胞にため込む働きがあります。
人工甘味料は、こうした作用に加え、糖を含まないにもかかわらず、インスリンに働きかけるという報告も複数あります。
アメリカ国立衛生研究所の調査では、人工甘味料入り炭酸飲料は、間接的にインスリンの分泌を促すホルモン(インクレチン)をふやすと発表しました。
これは、人工甘味料入りの食品を長期にとり続けると、知らないうちにインスリンの過剰分泌(肥満ホルモン)を招き、太ってしまうということです。
その結果、膵臓が疲弊し、将来的には糖尿病を発症する可能性も高まるというのです。
もうひとつ、糖尿病に関してですが、『ネイチャー』というイギリスの学術雑誌に、興味深い論文が掲載されていました。
水や砂糖水を与えられたマウスと、人工甘味料入りの水を与えられたマウスを比べると、人工甘味料入りの水を飲んだマウスの多くが、耐糖能異常(糖尿病と正常の間の境界型糖尿病)を発症していた、と記載されていました。
また、人を対象に検証した実験(イスラエル・ワイツマン研究所)でも、同様の結果が報告されています。
つまり、人工甘味料は肥満だけでなく、糖尿病のリスクも高めるおそれがあるのです。
では、こうした人工甘味料入りの食品と、どうつきあっていけばいいのでしょうか。
まず、「ノンカロリーだから太らない」という認識は捨てることです。
そのうえで、「人工甘味料が入っている」ことを意識し、無頓着に人工甘味料入り飲料や食品を、とりすぎないようにしましょう。
なにより、食事の際に飲む飲料は、お茶やお水にしてください。
そして、甘いものは、果物からとるようにしましょう。
永田孝行
1958年生まれ。医学博士。東京大学大学院医学系研究科で、肥満と代謝を研究。GI値の研究から「低インシュリンダイエット」を提唱する。現在は、日本ダイエットスペシャリスト協会理事長。日本ダイエットスペシャリスト協会(JDSA)